武庫川女子大学附属中学校・高等学校 指定第2期目 24~28

1. 平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約)

① 研究開発課題
探究心とコミュニケーション能力を備えた女性研究者・技術者を目指す人材を、中高一貫・高大連接により育成する。

② 研究開発の概要
(1)女性研究者・技術者の育成を目指す、中高6年一貫教育モデルを完成し、高大連接につなげる・・・中学「ものづくり」をスタート、高校3年の「卒業研究」をゴールとした課題研究を軸にし、課題設定力、問題解決力を磨いた。発達段階に応じた適切な指導法を研究するとともに、大学と連携した指導を強化して、高大連接につなげた。
(2)SSH活動の成果を地域に広げるセンター機能を確立する・・・「親子で楽しむ科学教室」、「科学交流合宿研修会」など、小中高生が参加する諸企画を実施し、「共に学び、探究心を高める交流」になるよう、方法と組織作りを研究した。小中高の先生方との交流を図って成果を広げる方法を模索した。大学や附置研究所と連携して行う「食育」と「健康に関する調査・研究」で、フォーラム等での発表を含め、成果を地域に還元した。また、公開講演会を通して地元住民に寄与した。
(3)教科との連携によって対話的授業を広げ、科学的探究心やコミュニケーション能力の向上を 図る・・・言語力を磨き、思考力を養うことを目指して、対話的授業の展開に努めた。特に、学校 設定教科・科目においては演習・実験を重視して、科学的探究心の向上を図った。

③ 平成27年度実施規模
中学・高校SSコース6学年(中学各2学級(146名)、高校1,2年各2学級、高校3年1学級 (168名))を中心として実施した。課題により対象をIコース理系、Iコース教員養成系の高校 生および全校生徒に広げて実施した。高校生合計対象人数は1178名である。

④ 研究開発内容

○研究計画
(1)平成24年度(第1年次)
① 中高6年間を2年ごとに区切り、基礎期、充実期、発展期として、発達段階に応じた密度の 濃い指導ができるよう、研究し、実践した。基礎期は「ものづくり」、充実期は「課題研究」、 発展期は「高大連携授業」と「卒業研究」を中心に取り組んだ。
② 食育と健康調査・研究を、大学や附置研究所と連携して行い、成果を地域に還元して健康作 りを進めた。小中高生が参加する諸企画を計画・実施し、共に学び、探究心を高める交流を行っ て、人材育成に貢献した。
③ コミュニケーション能力の強化、その基礎となる言語力、思考力を養うことを目指して、各 教科で対話的授業を研究し、従来の「全校研究会」に加えて「参観による授業研究」を開始した。

(2)平成25年度(第2年次)
① 2-2-2制をより確実なものとすることに努めた。中学では「ものづくり」を軸とした体験に よる探究心育成と、「グループ研究」形式による研究能力の土台作りを進めて、課題設定力、問 題解決力を磨いて研究を完成させた。高校では、大学による実験・実習を取り入れ、高大連接を 図った。
② 小学生を対象とした「親子で楽しむ科学教室」や高校生を対象とした「科学交流合宿研修会」 の実施、「公開講演会」の開催等を通し、SSHの成果を地域に還元した。児童による研究活動 を志す小学校が現れ始めた。また、大学や附置研究所との連携による研究を行い、「食育」や「健 康に関する研究」を進め、地域の健康づくりに貢献しうる活動を行った。
③ 言語力、思考力を養い、コミュニケーション能力を高めるための授業を各教科に於いて研究 ・実践した。「参観による授業研究」で、生徒の研究力の土台作りと学びの高次化に努めた。女 性研究者との接点を増やすなど、女性としてのライフサイクルを見通した教育も進めた。

(3)平成26年度(第3年次)
① 課題研究を中心に据え、それを支援する形で授業の充実を図り、教科を超えた融合・協力関 係を強化し、大学からのサポートも得て、中高6年間の中における発達状況に応じて女子生徒を 指導・育成する「武庫川モデル」の完成を目指して活動を行った。
② 小学生を対象とした企画や出前授業を実施し、科学の楽しさを伝える活動を、また、発表機 会を多くして成果を広げる活動を行った。
③ 参観による授業研究を学校全体の取り組みに昇華させ、教科間の連携を強め、様々な角度か ら生徒を支援する体制をとって学びの質向上に努めた。

(4)平成27年度(第4年次)
中間評価の結果を分析し、改善すべき点を明らかにし、全校を上げて研究開発課題の達成を目指 した。中間評価では個々の研究をクラブ活動の一環と誤認されたことは誠に遺憾であった。多方 面からの意見をいただきながら「対話的授業・協働的学び」を進め、より効果的な取り組みを実 施して「武庫川モデル」完成を目指した。

(5)平成28年度(第5年次)
SSコース以外のコースへも活動の成果を広げる。しっかりとした変容調査を行い、事業全体を 評価して仮説を検証する。
○教育課程上の特例等特記すべき事項
特例とすべきものは無い。教育課程を変更して、次の学校設定教科・科目を開設した。

教 科 科 目 履修学年 単位
学校設
定教科
科学セミナー 高校3年
理系英語Ⅰ 高校1年
理系英語Ⅱ 高校2年
理系英語Ⅲ 高校3年
平成27年度の教育課程の内容
数 学 数学演習Ⅰ 高校1年
数学演習Ⅱ 高校2年
数学演習Ⅲ 高校3年
理 科 科学演習実験Ⅰ 高校1年
科学演習実験Ⅱ 高校2年
科学演習実験Ⅲ 高校3年

 

 

○平成27年度の教育課程の内容

高校SSコースは他に比べて理科、数学の単位数を多くし、上記学校設定教科・科目を設定し て、探究意欲・研究力を高めるように努めた。高校1年の科学演習実験Ⅰには、校外研修や海外 研修を含めた。高校2年、3年の科学演習実験Ⅱ、Ⅲは、大学での連携授業を実施した。中学で も理科、数学の時間数を増やし、総合的学習の時間を利用したものづくり、サイエンスツアー、 発表会など、SSコース独自の行事を実施し、女性研究者・技術者養成の土台作りを目指した。

○具体的な研究事項・活動内容
(1)中学SSコース
中高6年一貫の立場から、中学1,2年の基礎期では科学に対する興味付けと、科学に対する姿勢を築くべく取り組みを進めた。中学1年では、「種子から製品へ」をテーマに植物栽培の中で生命の営みを観察し、紡糸、染色、搾油などの加工も行って科学技術の基礎を学んだ。中学2年では、電気分野に挑戦し、物理的な考えの基礎を体験させた。高校へのつなぎに当たる中学3年では自ら課題を設定してのグループ研究を開始、いくつかのグループは高校生に混じって研究を進めた。発表する機会も与えて活動のまとめとし、高校での課題研究へと繋げた。夏休みに学年テーマに従って2泊3日の「サイエンスツアー」を実施し、学びを深めた。理科の授業では多くの実験を行い、深く学ばせた。また、「多読英語」を進め、英語力の基礎固めを目指した。
(2)学校設定教科・科目
高校では科学演習実験、科学セミナー、数学演習、理系英語を開設して研究・開発を行い、内容の充実を図った。「科学演習実験Ⅰ」では、実験を通して測定、データ処理、レポートの書き方など、基礎事項の知識・能力を習得させた。「科学演習実験Ⅱ、Ⅲ」では、武庫川女子大学理系学部・学科での実験・実習を実施し、高度な内容を体験させた。「理系英語」は高校3年での英語での論文作成と発表を目標に、ALTを含めたティームティーチングを行った。高校3年の「科学セミナー」では卒業研究を行い、論文にまとめ、英語での発表を行った。ルーブリック法により、生徒、教員双方から評価した。
(3)発表・交流・発信
SSH成果発表会で、中高各学年が活動・研究成果をポスター発表した。学外の発表会、フォーラム、学会でも発表し、成果を発信した。小学生対象の「親子で楽しむ科学教室」、「研究発表会」を開催し、本校生がその指導に加わった。理科では小学生への指導・交流を行った。高校1年のアメリカ海外研修では、現地高校生・大学生と交流し、プレゼンテーションを行った。課題研究の内容を発表し、指導・意見をいただいた。
(4)高大連携
武庫川女子大学とは、科学演習実験Ⅱ、Ⅲでの特別授業(各7回、11回)のほか、課題研究の指導・助言などの協力もいただいた。大阪大学産業科学研究所との連携・夏期研究体験も継続実施した。「科学交流合宿研修会」では大阪大学、神戸大学、兵庫医科大学など6大学に協力いただき、連携がより強固なものとなった。
(5)対話的授業
年度初めに授業担当者による「目標」を設定し、そこに向かって各教科が研究・努力を進めた。学校行事として「授業公開週間」が定着し、教員相互に意見交換を行う機会が増えた。

⑤ 研究開発の成果と課題
○実施による成果とその評価
(1)中学SSコース
中学1、2年の基礎期では、「ものづくり」を通して科学することの楽しさとやり遂げることの達成感を感じさせることができた。ここで得た自信が、中学3年からの「課題研究」につながり、実験技術などはまだまだであるが、自分たちで疑問や関心を持ったことをテーマに、積極的に活動を行った。高校生と一緒に活動するグループもあり、研究に向かう姿勢を上級生から学ぶことができた。各学年とも成果を発表し、評価を受けて、次のステップへの励みとした。夏季にはそれぞれのテーマに沿った研修先を選んで「サイエンスツアー」を実施して、学びを深めることに努めた。始業前の読書の時間を利用して行っている多読英語は、図書の量・内容とも充実し、休み時間中に積極的に取り組む生徒も多い。
(2)学校設定教科・科目
研究活動への支援の目的で設定されている数学演習では、指数関数・対数関数を高校1年生で先取り、3年生では行列を取り入れるなど工夫し、また、暗号の原理を取り入れることや、和算、数学オリンピックの問題など、教科書から離れたところで数学が生かされていることや視点の重要さを実感できている。これらのことが生徒の興味・関心を高め、自由な発想ができるように気をつけながら取り組むことができた。
科学演習実験Ⅰでは物理、化学、生物分野のテーマで基礎的内容を確認する実験を通し、器具・装置の扱い方、数値の処理法など、課題研究を進める上での必要事項を身に付けさせることができた。理化学研究所での研修や川西市黒川地区で行った里山実習など、校外研修も5回実施した。科学演習実験Ⅱ、Ⅲの大学連携特別授業も取り入れ、高校では扱えない実験機器や内容に触れ、また、研究者としての姿勢・考え方に触れて、大きな感化を受けた。
理系英語では「英語による卒論発表」を最終目標に科学英語を学び、表現力やコミュニケーション力を養い、理解を深め、実践力を高めた。
高校の課題研究(グループ研究)では高大連携による研究も進んで研究の水準も高まり、卒業研究発表では、すべてのグループが英語による発表・質疑応答を行った。
(3)発表・交流・発信
「親子で楽しむ科学教室」によって科学好きな児童を発掘し、同時に保護者にも科学の楽しさを伝えて、家庭に科学を持ち込む役割が果たせた。これに続く「研究発表会・展示会」では、保護者、小学校教員等の前で児童が生き生きと発表した。本校中高生がこれらの指導・補助に入り、共に楽しみながら学んだ。サイエンスフェアin兵庫など、「兵庫咲いテク事業」を通した活動・交流で、参加各校との連携を強めることができた。海外研修での交流は、英語でのコミュニケーションに苦労したが、交流の大切さを認識し、語学力向上を目指すきっかけとなった。学会やフォーラムなど、機会あるごとに課題研究の成果を発表し、その普及に努めた。近隣小学校からの要請を受け、理科授業(実験)を実施した。
(4)高大連携
武庫川女子大学理系学部・学科には、高校2年生、3年生を対象に特別授業をお願いし、高度な内容で実験・実習を指導いただいた。これは各学科でどのような研究が進められているかを知る機会となり、進路を考える上でも有意義であった。いくつかの課題研究では、大学教員から指導を受けて、内容のレベルアップと論理性や研究態度などの向上が見られた。「科学交流合宿研修会」の実験・実習では、武庫川女子大学を含む6つの大学から協力いただき、丁寧な指導をいただいた。今後もこの関係を継続し、さらに連携が強まればと考えている。
(5)対話的授業
各教科ともその重要性を意識して取り組み、教員全体の意識も徐々に変化してきた。授業担当者が年度初めに目標を設定し、それに向けて取り組み,結果を評価する形はできているが、その評価を評価・検証するシステムが十分に機能しておらず、喫緊の課題である。

○実施上の課題と今後の取組
(1)中学SSコースの指導教員の負担をいかに軽減するかが課題である。外部講師の活用を図ることに加えて、生徒のモチベーションを高める授業の実施などで、生徒の自主性・積極性を引き出し、教えなくても学ぶ生徒を作り上げたい。
(2)数学演習、科学演習実験では、授業担当者が工夫を凝らして実験・演習を展開した。限られた授業回数の中、基礎力を充実させ、探究力を身に付けさせるさらなる授業力の向上を目指したい。理系英語での支援を得て、科学セミナーでは全員が英語で卒論発表するまでになった。この流れを活かし,さらに教科間の連携を強めて、課題研究を支援したい。
(3)中高6年を通し、「研究→発表→問題点の整理」を繰り返しながら進め、大きな成果を上げてきたが、今年度は学校改革の都合で「文化部発表会」での発表を実施できなかった。次年度はできるだけ多くの発表ができるよう、その機会を増やすことに努める。
(4)SS活動を地域に広げることは本校の大きな役割である。親子で楽しむ科学教室や科学交流合宿研修会など、探究心を高め、科学を愛する心を育てる活動を推進していく。
(5)科学演習実験Ⅱ、Ⅲにおける大学側の負担増が問題になっている。学科によって温度差があるのは事実であるが、SSH事業の趣旨を理解していただき、大学側にもメリットがあることを説明して、気持ちよく協力していただける雰囲気作りに努めたい。
(6)対話的授業:学院全体の教育改革が叫ばれる中、「授業を大切にしなければならない」という当たり前のことが最も重要であるにもかかわらず、その研究・実践が最も遅れているという現状に直面している。アクティブラーニングなど、生徒の活動を重視した授業が求められている。授業担当者による「目標設定」と「事後評価」を各教科で検討し、課題・問題点を明らかにしつつ、改善策を示し、教育改革のリーダーシップを取りつつ具体的な成果を目指したい。
(7)課題研究を軸に据え、成果を卒論にまとめるスタイルは確立したと考える。各教科のサポートをさらに充実させ、大きな成果に結びつける「武庫川モデル」を完成させたい。

別紙様式2-1

武庫川女子大学附属中学校・高等学校 指定第2期目 24~28

2平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題

① 研究開発の成果
平成24年度に5年間の指定を受けて第2期SSHが始まった。第1期の成果と反省を踏まえ、女性研究者・技術者を目指す人材の育成という研究開発課題を掲げ、その達成のために3つの開発目標を立てて実践的教育研究を行ってきた。その4年目に当たる今年度の成果をまとめる。
(1)中高6年一貫教育モデルの完成
a.中学SSコースにおける成果
ものづくり~課題研究:中高6年一貫の中で、中学ではまず科学を楽しく学ばせ、興味・関心を高めると共に、研究のプロセスを身に付けさせることを主眼に取り組んだ。中学1、2年の「基礎期」では、科学の世界への導入を図った。1年生では「作物栽培と加工」をテーマに、綿、トウモロコシなどを栽培し、収穫物の加工も行って、頭と体を使って楽しく科学技術の初歩を学ばせることができた。2年生の「電子工作」では、アナログテスターを作成し、LEDを用いた様々な回路を組み立てた。一般に女子が苦手とする「電気・電子」への抵抗感を除き、「できる」を体験させ、面白さを感じさせて、この分野に対する興味を抱かせることができた。指導する側も要領を得て、より効果的な指導ができた。「充実期」の入り口に当たる3年生では自分たちで選んだテーマでグループ研究を行い、「調べ、実験し、結果を発表する」という流れで研究の基礎を習得させた。高校生と共に研究を進めるグループも出てきた。互いに学び合い、競い合う仲間として中高生が一緒になって研究する態勢は、中と高の仕切りを取り払う一歩と成った。それぞれの学年の活動結果は班ごとにまとめ、ポスター発表を行って評価を受けた。発表時の評価・助言が励ましとなり、以後の学習・研究へのモチベーションを高めることができた。(資料:中学校「ものづくりと探究班」一覧P.42)
校外研修:各学年とも、夏期に2泊3日の「サイエンスツアー」を実施した。学年ごとの「テーマ」に従って目的地を決め、事前学習を十分に積み、事後学習にも取り組ませた。以下の成果が認められる。
・事前の調べ学習を十分に行い、クラス内での発表を通して目的や基礎知識を共有して現場に臨  み、研修を有意義に進めることができた。
・研究者との触れあいを通して学びを深めると共に、研究者像を具体的に描くことができ、自ら  の将来の姿と重ね合わせることができた。
・事後にグループごとに研修報告書を作成すること、SSH発表会などで研修に関するポスター 発表やプレゼンテーションを行うことによって研修を振り返り、内容を深めることができた。
英語力の強化:グローバル人材が求められる今日、英語を使いこなす力は必須となった。中高とも「多読英語」を導入し、ORTなどの書籍を揃えて朝の読書の時間に生徒各人のペースで黙々と読ませることを続けた。これによって文法力が向上し、英語を読むことに対する抵抗感がなくなり、長時間読めるようになって、内容を感覚的にイメージできるようになった。
b.高校SSコースにおける成果
高校では3年間を通した「課題研究」を軸として、探究力、コミュニケーション能力の向上に努 めた。これを支えるために理科、数学、英語に学校設定教科・科目を設けた。
科学演習実験:科学演習実験Ⅰでは基礎的な実験操作、科学的試思考法を学ばせた。教員4名が物理、化学、生物分野を担当し、実験指導とレポートの添削指導を行った。生徒の実験技術が向上し、実験計画の立案、結果の考察、レポート作成がスムーズに行えるようになって、研究活動の高度化に寄与した。さらに、理化学研究所(神戸)、SPring-8、JT生命誌研究館等での研修・見学を実施して、研究者や現場で働く人々から指導いただき、研究に対するイメージを具体化することができた。科学演習実験Ⅱ、Ⅲでは、本学理系学部・学科による特別授業を実施した。大学の先生方にいろいろ工夫いただいた実験・実習は、高校では扱えない題材や実験材料、器具の使用もあって、生徒には新鮮かつ刺激的であり、研究に対する興味・関心を高める役割を果たすと同時に、大学で研究することについての具体的なイメージ与えることができ、進路について考える機会ともなった。高校教員による実験・実習も工夫を加えてより良い内容で実施するよう努めた。(資料:科学演習実験年間アンケートP.46~47)
科学セミナー:高校1年から継続実施してきた課題研究を、この時間(週2単位)で卒業研究にまとめた。2月の卒業研究発表会では、すべての班が英語による発表を行った。発表会には1,2年生も参加した。それに至る過程で次の成果が得られた。
・メンバーが協力し合い、協働して研究に取り組む姿勢を身に付けた。
・ルーブリック法で生徒・教員双方からの評価を行い、問題点を改善しながら自主的に研究を進 める手法を身に付けた。
・繰り返し発表し、評価を受けることで、研究をいろんな角度から客観に視る態度を身に付けた。
(資料:高等学校「卒業研究・グループ研究」一覧P.42、卒業研究発表会 英語による発表に対する生徒の評価P.54)
数学演習:「科学演習実験」や「科学セミナー」で用いられる数学的手法を獲得することを目的とした「指数関数・対数関数」、「統計・確率分布」、「推定・検定」などを取り扱い、理科との連携を図ることができた。常用対数の学習は、実験のデータ処理等の理科の学習に繋がる効果が大きかった。指数法則の拡張の考え方や対数の性質を理解することで、数学に親近感を覚えることができた。行列式の高度な内容を学ぶことにより,計算の処理能力を飛躍的に向上させた。和算(算額)を扱うことによって、数学の歴史に触れ、視野が拡がり、興味や関心が高まったと考える。生徒の関心を高めて自由な発想を大切にする授業展開を行い、数学オリンピックの問題を取り上げるなどの工夫をした。
理系英語:理系として「使える英語」を目指し、英語科教員と理科教員によるティームティーチングで実施した。理解力、表現力が向上し、英語を「使う」ことへの抵抗がなくなった。高校3年での卒業論文発表はすべて英語で行うことができた。
c.高大連携
武庫川女子大学との連携:中高一貫の立場から、科学演習実験ⅡおよびⅢで、理系学部・学科による特別授業(実験・実習)を実施していただいた。内容について工夫していただき、また、様々な提案をいただくなど、高大接続の研究が深まった。いくつかの課題研究では、指導・助言をいただき、研究内容を深めることができた。学会やフォーラムでの発表にも繋がった。
他大学との連携:科学交流合宿研修会に協力いただいた大学は、昨年度と同じ6大学(14研究室)で、実験・実習を通して生徒に刺激を与えることができた。兵庫「咲いテク」事業や近畿圏高校生サイエンスフォーラムなどで、多くの大学関係者と接し、高大連携についての意見交換を行う機会を得た。それらを参考にして今後の事業展開に活かしたい。
(2)活動成果を地域に広げるセンター機能の確立
a.地域交流
科学交流合宿研修会:今年も兵庫[咲いテク」プログラムの一つとして実施した。SSH校以外の生徒も参加して行われ、互いに切磋琢磨しながら科学する楽しさを伝えることができた。英語による「サイエンスコミュニケーション」も本校ALTの協力によりスムーズに進めることができた。参加(引率)した教員間の情報交換は、今後の研究指導、部活動指導に役立つものであった。
親子で楽しむ科学教室・研究発表会展示会:探究心の向上に向けた地域支援として始めたこの企画は、理科好きの児童を増やす機会として発展を重ね、今年度も約200組の親子の参加を得て実施した。この会を受けて「研究発表会・展示会」を開催、児童に発表の機会を提供して、科学の芽を伸ばし、科学を楽しむ土壌を創り出すことができた。本校生徒が補助や司会進行役を見事に果たして、共に学ぶ機会とすることができた。
SSH公開講演会:今年も本学公江記念講堂を会場に公開講演会を実施し、科学の普及に努めた。(講師:田村忠司氏、演題:現代型栄養失調とサプリメントの正体) (資料:親子で楽しむ科学教室アンケートP.50、科学交流合宿研修会アンケートP.49)
b.食育活動
大学附置研究所の指導で続けている「食育活動」に3グループが取り組んだ。アンケート調査の企画、データ処理と解析・など、自分たちで考え、まとめ、考察する力が付いた。結果を世界健康フォーラム、国際タウリン学会日本部会など、広く一般の方の前で、あるいは研究者に対して発表する機会を得て、食育普及に貢献した。
c.兵庫「咲いテク]委員会のメンバーとして
兵庫県下SSH指定8校が、県教育委員会と共に兵庫「咲いテク」委員会を組織し、課題研究の充実と高・大・産の連携に重点を置いた活動を行った。その中で、他校との情報交換、大学人や企業人との連携・交流を通して、生徒を育てるために何が必要であるかを再認識することができた。
(3)対話的授業を広げ、科学的探究心とコミュニケーション能力の向上を図る。
授業研究と評価
学校全体の取り組みとして「授業公開週間」が年2回(1学期と2学期)実施された。見学者が感想を記して、率直な意見交換を行った。他教科の授業を参観し、生徒の反応を見て、「対話的授業」の意味を共有することができた。また、各授業担当者が年度当初に目標と評価観点を明示し、年度末に評価を行う「自己評価」を今年も実施し、どのような工夫がなされたのかをみんなで共有して、次年度における授業改善に繋がるよう、各教科で検討・評価を行った。(資料:教科別自己評価表P.51~54)

② 研究開発の課題
中高6年間を基礎期、充実期、発展期の3段階に分け発達段階に応じて指導する武庫川モデルの開発を進めてきた。SSコース(主対象生徒)では「課題研究」を軸として各教科がそれぞれの立場からそれを支援するよう授業を進め、最終的に卒論の形でまとめ上げる「型」ができあがりつつある。ただ、それが他のコースにまで取り入れられていないというのも事実で、成果を他のコースに広げるにはどうすれば良いか、また、どのような問題点があるのか、我々がどのように支援すればよいか、学院全体として現在進行中の「教育改革」での十分な検討と積極的な推進が期待される。
(1) 課題研究指導法
中学1年、2年の研究は、「ものづくり」、「電子工作」とテーマが決まっており、その指導はクラス担任を中心にして行っている。だが、テーマの性質上、どうしても専門性を持った教員の援助を要し、その負担が大きくなる。SSコース2クラス化でグループ数も多くなり、教員の負担をいかに減らすかが大きな課題である。
高等学校での「課題研究」は、1年次からスタートし、高校3年の科学セミナー(2単位)で卒業研究として成果をまとめる。SSコース2クラス化に伴って研究グループの数が多くなり、かつその内容も多岐にわたるため、指導する側の負担が非常に大きくなってきた。指導する理数担当教員の数が限られていることから、一人の教員が複数の研究グループを抱えているケースが多い。そこで、次のような方法で「課題研究」がより効果的に進むように改善を図る。
・高校1年の初期に説明会を開き、既存の研究グループに入るよう指導し、研究を継続して内容   を深めることに努める。
・対話的、探究的授業を徹底することによって、日常の学びの中から高校生に手が届くような研  究テーマを発見させるように努める。
・附属校のメリットを活かし、内容や研究法について、大学の研究室に指導・助言をいただく。
課題研究は本校SSHの柱である。研究活動に対する生徒の意欲を削がぬよう、また、生徒の成 長を促すよう、指導体制・指導法を工夫していきたい。
(2) 女子教育のあり方の研究と実践
女子中高6年一貫校である本校では、発達段階に応じて中高6年間を基礎期2年間、充実期2年間、発展期2年間に区切って教育を実践する。SSH事業もこの全体計画の中に位置付け、成果を学校全体に展開すべく研究を進めている。
(ア) キャリア教育
女性研究者・技術者を志す生徒たちにどのような未来を指し示すことができるか。女性研究者・技術者が社会で働くことに未だ数々の困難が伴う日本の現実を直視して、立ち向かい、乗り切る意欲と知恵を身につけ合う教育を、中学生の早い段階から進める必要があると考える。武庫川学院も「男女共同参画推進宣言」で、次代を担う女性の育成を通して、率先して男女共同参画を推進することを宣言し、女性研究者のライフイベントの支援を目指して「女性研究者支援センター」を設立した。附属中高でもSSH成果発表会で卒業生講演を実施する、研究所訪問では必ず女性研究者と交流する時間を持ち、「女性」から「女性」としての生き方を聞く機会を作るなど、生徒たちが女性としての将来を考え、生き方を模索する仕組みを考え、実施してきたが、さらに積極的な働きかけができるよう、支援センターと連携してロールモデルとして卒業生の支援を得る仕組みを構築するなど、女子校だからできること、しなければならないこと考え、そのプログラムを研究して、女子教育を進める。
(イ) 教科指導・基礎学力の充実
大学教育からスタートしたアクティブラーニングが中高の教育にも導入されようとしているが、本校では「対話的授業」としてその内容を先取りした研究を進めてきた。生徒の能力向上に、日々の授業・教科指導が重要であることは論を待たない。課題研究を進める上でも「能動的学修」は必須であり、通常の授業の中でその習慣を身に付けさせることが重要であると考え、各教科で取り組んできた。その重要性・必要性への理解は深まってきたが、具体的な動きは十分とはいえない。基礎学力としての体系化された知識と課題解決能力の充実なくして研究力の向上はあり得ない。また、女子の特質を汲んだ「ていねいな授業」、「励まして挑戦させる指導」も求められる。中高一貫校としてどのような授業展開が適切か、授業目標の設定と実施結果の評価を積み重ね、検証する。(資料:教科別自己評価表P.51~54)
(3) グローバル化に向けた英語力の向上と国際性の育成
高校1年で海外研修を実施し、世界的な問題意識と地球規模の大きな視野を養って、高い探究力を目指す高校生活をスタートさせている。多読英語も取り入れて、英語力の向上を目指した。
「理系英語」で科学英語の読み書きとプレゼンテーションの指導を行い、卒論発表を全員が英語で行うまでの結果を出してきた。学会などでも英語で研究成果を発表できるようになった。コミュニケーションツールとして英語を自由に使いこなすことは、国際的に活躍できる女性研究者・技術者を目指す生徒たちにとって必須の事項である。「多読英語」で文法に慣れさせ、「対話的授業」を進めて自分の意見・考えを英語で伝える方法と意欲を身に付けさせ、英語を使う機会を増やして、実践能力のさらなる向上を目指す。
中学3年間の座学だけでは十分な英語力、英会話力をつけられていない現状が明らかとなっている。「理系英語」で培った方法を中学にまで広げ、高校での活動がよりスムーズに行えるよう、その方法の開発に努める。