平成30年度スーパーサイエンスハイスクール
研究開発実施報告書(要約)

① 研究開発課題

探究力、創造力にあふれ、国際性に富む女性研究者・技術者を育成する中高一貫教育モデルの開発・研究

② 研究開発の概要

研究開発課題を達成するために3つの目標を立て、それを実現するために、3つの仮説を立て、実践・検証を行う。この中で、中高6年一貫の探究活動の実践では、大学との連携を拡大することで、幅広い分野での協働的な学び、課題研究が行われるような取り組みを行う。さらに、各教科・科目の授業では、ICT機器を取り入れた授業改善の研修会を実施することで、対話的な授業を全校に広げる試みを行う。今年度から高校1年生CGコースにも探究活動の取り組みを開始し、研究を行う女性の人材育成の裾野を広げる。

③ 平成30年度実施規模

今年度、高等学校は、1年全コース334名、2年SSコース40名、3年生SSコース50名を対象として実施する。また、「中高一貫教育」を行っているため、中学SS、CSコース102名も対象として実施し、全体の規模は、中学校・高等学校 合計526名を対象とする。

④ 研究開発内容

○研究計画
第2期の研究開発の結果を受けて、経過措置の期間、以下のような計画で実施した。

1 中高6年一貫教育モデルの改善
第2期の中高6年一貫の「武庫川モデル」での探究活動を改善するために、課題研究において、情報・機械系などの工学系の分野にも挑戦させる。これに伴い、関西大学システム理工学部(平成29年度より連携)との連携を行うことで、工学系の探究活動、課題研究へと幅を広げる取り組みを行う。また、高校1年生CGコースにも探究活動を開始する。

2 対話的授業を広げる取り組み
第2期では、SSコースを対象に学校設定教科・科目を中心に、「SSH自己評価表」を作成し、前年度の反省を踏まえて年度当初に単年度目標を設定・評価し、対話的な授業に向けた取り組みを行った。これを受けて、今年度はICT機器の導入とiPadを活用した教員研修と授業改善の研修会を行うことで、対話的な授業を全校的に広げる試みを行う。

3 SSH活動の成果を地域に還元する実践研究
第2期での活動を引き継ぎ、より積極的な活動に取り組む。11回目の科学交流合宿研修会も今年度は本校主催で実施する。食育については、本学国際研究開発研究所の指導で、食育研究班が、企業との連携で商品化を行った。家政部でも企業と連携して共同で商品開発を行い、兵庫県立柏原高校と地元の食材を使った献立作りでも共同研究を行う。
小中学校への「出前授業」は、地域の小中学校と連携調整して実施する。「親子で楽しむ科学教室」は、地域の子どもたちに理科好きを育てるための企画として、夏休みに実施する。SSH公開講演会は2月に実施し、本校の生徒のみならず、地域にも広く広報し還元する。

○教育課程上の特例等特記すべき事項
・特例はない。
・「学校設定教科・科目」を次の表に示す。

教 科   科 目 履修学年 単位
 

学校設定
教科

 

科学セミナー 高3
理系英語Ⅰ 高1
理系英語Ⅱ 高2
理系英語Ⅲ 高3
数 学 数学演習 高2
数学演習 高3
理 科 科学探究 高1
科学演習実験 高2
科学演習実験 高3

 

○平成30年度の教育課程の内容

上記学校設定科目教科・科目を設定して、「科学探究Ⅰ」では、校外研修および海外研修も含めた。「科学演習実験Ⅱ」「科学演習実験Ⅲ」では、高大連携特別授業を実施した。高校1・2・3年の「総合的な学習の時間」、高校3年の「科学セミナー」を中心に探究活動を実施した。中学では「総合的な学習の時間」を利用して、探究活動など、SS・CSコース独自の行事を実施した。また、平成30年度高校入学生からは、従来のSS、SE、Iの3コースをCS・CGの2コースに変更し、教育課程も一部変更した。

◯具体的な硏究事項・活動内容

1 中高6年一貫教育モデルの改善

1.1 学校設定教科・科目の授業実践を通した系統的な探究活動の研究開発

(1)「栽培・加工とプログラミング」
(2)「課題研究」
(3)「卒業研究」

1.2 大学・研究機関・企業などの連携による研究開発

(1) 武庫川女子大学との連携
(2) 関西大学システム理工学部との連携
(3) トルコの高校との海外交流
(4) 科学交流合宿研修会での連携

1.3 校外研修・サイエンスツアーによる研究開発

(1) 校外研修
(2) サイエンスツアー(夏季2泊3日の校外研修)

1.4 海外研修による一段高い研究開発

高校1年 海外研修(アメリカ サンディエゴ)(平成30年3月12日~3月17日実施)

1.5 研究意欲を高める講演会  SSH公開講演会(2月)

2 対話的授業を広げる取り組み

対話的な授業の実践とICT教育

(1)「理系英語」における授業の取り組み
(2) ICT教育と授業改善に向けた取り組み

3 SSH活動の成果を地域に還元する実践研究

3.1 科学交流合宿研修会
3.2 大学附置研究所・企業等の指導による食育
3.3 地域活動
3.4 兵庫「咲いテク」事業推進委員会

 

⑤ 研究開発の成果と課題

○実施による成果と評価

1 中高6年一貫教育モデルの改善

1.1学校設定教科・科目の授業実践を通した系統的な探究活動の研究開発

A 中学における「探究活動」:中学1年:グループ活動で協働的学びの体験。中学2年:自ら作成したプログラムで達成感の体験。中学3年:自由研究(グループ)で生徒の自主性と問題意識の育成。12月のSSH成果発表会で、保護者・来校者から高い評価を得た。

B 高校における「探究活動」:高校3年生の2月の卒業研究発表会(1・2年生も参加)は、 すべての研究班が英語で発表を行い、一部の班では質疑応答も英語で行うことができた。また、①協働して研究に取り組む姿勢 ②自主的に研究を進める手法 ③研究を客観的に視る態度を学ぶことができた。「科学探究Ⅰ」では、実験技術が向上し、実験レポート作成がスムーズにできるようになった。「科学演習実験Ⅱ・Ⅲ」では、高大連携特別授業を通じて、課題研究に対する興味・関心を高め、キャリア教育としても有効であった。

C 今年度、高校1年生(CGコース)でも、「総合的な学習の時間」にSDGsについて、調べ、まとめ、発表を行い、高校2年(CGコース)の探究活動に繋ぐことができた。

1.2 大学・研究機関・企業などの連携による研究開発

(1)武庫川女子大学との連携として、科学演習実験Ⅱ・Ⅲでの高大連携特別授業(1.1B. 参照)行った。また、大学・国際健康開発研究所による課題研究の指導・助言により、学会・フォーラムでの研究成果の発表。食育の研究における商品化を実現した。

(2) 関西大学システム理工学部との連携により、工学系の課題研究も活発になった。

(3) 上記(2)の課題研究を受けて、「ロボット研究チーム」を発足した。
共同研究・文化交流の姉妹提携を結んだトルコのBahcesehir High School for Science and Technologyと海外交流を通して、今後、ロボット世界大会出場を目指し挑戦していきたい。

(4) 大阪大学、神戸大学、甲南大学、理化学研究所、武庫川女子大学の協力で「 科学交流合宿研修会」は成果を収めることができた。

1.3 校外研修・サイエンスツアーは、科学に対する向上心と研究意欲を高め、研究者との交流によりキャリア教育として有効であった。

1.4 高校1年 海外研修(アメリカ サンディエゴ)(平成30年3月12日~3月17日実施)
企業訪問や現地研究者、現地高校生との交流での成果に加え、環境保全・持続可能型社会を目指す市の取り組みに、生徒たちが問題点に気づいたことは大きな成果であった。

1.5 SSH公開講演会は、生徒・教員ともに大きなヒントを与えて、また、身近にある疑問を調べる自主性を養う有効な学びであった。地域の方々にも「SDGs」を学ぶ機会となった。

2 対話的授業を広げる取り組み

対話的な授業の実践とICT教育

(1) 学校設定教科・科目「理系英語」は、プレゼンテーションを強化するために、対話的な授業は欠かすことのできない要素である。卒業研究発表会では、課題研究をすべて英語で発表し、一部の班は英語での質疑応答にも対応するなど、コミュニケーション能力が向上した。

(2) 各教科のICT教育と授業改善に向けた取り組み

ICT教育の研修会により、iPadが授業で活用されようになり、公開授業週間により授業改善に向けた取り組みも着実に行われた。またSS・CSコースの「SSH事業自己評価」によって、対話的な授業が取り入れられるようになった。これによって、生徒のコミュニケーション能力が向上し、探究する力の育成に役立っていると考えられる。さらに、CGコースにも対話的な授業を行う変化が起こってきた。

3 SSH活動の成果を地域に還元する実践研究

3.1「第11回 科学交流合宿研修会」は、参加した生徒・教員、大学・研究所の研究室の担当者からも高い評価を得た。また、教員にとって情報を交換する良い機会となった。

3.2 本学国際健康開発研究所の指導による食育研究班と家政部の研究・開発・商品化の取り組みは、生徒にとって、大変有益な経験になり、大きな自信となった。

3.3 小中学校での出前授業は、子どもたちに科学への興味関心を高め、小中学校教員にも実践事例を提供する支援にもなった。また、「親子で楽しむ科学教室」は当日の警報で急遽中止となったが、理科好きの児童を増やす企画としては有効である。

3.4『兵庫「咲いテク」事業推進委員会』が主催する「第11回サイエンスフェアin兵庫」に、本校の高校2年生3グループが参加・発表し、交流を深めることができた。

 

◯実施上の課題と今後の取組

(1) 女性人材を育成する6年一貫「武庫川モデル」の活動内容を精査・検討して、充実・発展させる。

(2)本校SSHの柱である課題研究について、附属校の利点を活かし、生徒たちが向上心を持って探究活動を行い、また生徒の成長を促すよう、指導体制・指導法を工夫していく。

(3)探究活動、各教科・科目によって育成される力を明確にして、実践・評価・分析し、育成する力の向上を図る。iPadを活用したルーブリックによる評価、生徒各自のポートフォリオ作成を行うことができるように研究・検討していく。

(4)今年の高校1年生から開始したCGコースへの探究活動の取り組みを推進していく。

(5)女子教育の発達段階に応じた教育の研究と実践

(ア) キャリア教育:武庫川学院の「男女共同参画推進室」と「女性研究者支援センター」とも連携して、卒業生の進路追跡を行っていく。

(イ) 教科指導・基礎学力の充実:ICT教育の研修会、授業でのiPad活用、公開授業週間と授業改善の教員研修会も行われるようになった。「対話的な授業」の実践を全校的な取り組みとすることで、CGコースでの探究活動にも効果が現れると考えられる。iPad活用によって、さらに「対話的な授業」の実践が行われるように推進していく。

(ウ) グローバル化に向けた英語力の向上と国際性の育成

英語での4技能を鍛え、英語を使う機会を増やすことで、自分の意見・考えを英語で伝える実践能力の向上を目指す。その方法の開発に努める。