【2018年度海外研修】

SSコース海外研修報告書

行 程

  • 3月12日(月)
    ○ 15:00 関西国際空港集合(17:45発のJAL60便でロサンゼルスへ)
    ○ 現地11:50着 バスにてサンディエゴのホテル
    Hilton Garden Inn San Diego/Rancho Bernardo へ(16:00着)
  • 3月13日(火)
    ○ サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社 見学とレクチャー 科学実験体験
    ○ サンディエゴ・サファリパーク 見学とレクチャー
    ○ ホテルにて現地で活躍する日本人研究者・薬剤師(2名)の講演
  • 3月14日(水)
    ○ サンディエゴ市役所 サンディエゴの環境対策についての講義
    ○ カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD) 理系研究者(2名)の講義 研究室見学
  • 3月15日(木)
    ○ Del Norte High School バディとともに授業体験
    ○ カリフォルニア州立大学サンマルコス校(CSUSM) 生物学教授(2名)の講義
    本校生による研究発表(英語プレゼンテーション) 研究室見学
  • 3月16日(金)
    ○ 9:00 ホテル発 バスでロサンゼルス空港へ
    ○ 13:45 ロサンゼルス空港発(JAL69便で関西国際空港へ)
  • 3月17日(土)
    ○ 18:00 関西国際空港着
    ○ 19:30 関西国際空港にて解散
サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社
サンディエゴ・サファリパーク
日本の女性研究者による講演
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)
Del Norte High School
カリフォルニア州立大学サンマルコス校(CSUSM)
報告会
アメリカでの生活

【2017年度海外研修】

高1 SS 海外研修(アメリカ・ サンディエゴ)

2016年 8月23~29日

1.目的・仮説
アメリカ西海岸にあるサンディエゴは,豊かな自然に囲まれ,若さと知性にあふれた多くの研究者が集い,製薬,医療関連をはじめとする最先端科学の研究機関が集まっている都市である。この地における研修を通して,多くの研究に触れ,同世代との交流を通して,問題意識をしっかりと持ち,自ら課題を設定するとともに,世界的な視野を持つ研究者・技術者を目指す女性を育成したいと考えた。

そのために,以下のようなプログラムを設定した。

プログラム内容

①  現地高等学校で科学交流を行い,研究の進め方などについて生徒たちとディスカッションを行う。

②  カリフォルニア大学,カリフォルニア州立大学では,研究室・実験室を視察し,学生とディスカッションを行う。

→ ①および②を通して,国造りの原動力である教育・研究の大切さについて自覚させる。

③  生物多様性の観点から動物園の役割に注目させ、動物保護の実態,生態系を守るために働く人々の活動などを視察する。

→ 科学と人間の関わりを意識させ,命の大切さを考えさせ,地球人として自分たちが果たす役割についての自覚を促す。

④  現地で働く邦人女性から,活動内容や生活環境などについてのレクチャーを受け,ディスカッションを行い,海外で働くことや研究することの意味を考えさせる。

この研修によって,科学の様々な側面とグローバル化の実情に触れ,視野を世界に拡げることができる。これまでに培った「科学する心」をさらに大きく育て,将来の研究者像を描きながら一段高い目標を設定して今後の課題研究に取り組むことができる。それによって,生徒たちの目指す「有為な女性研究者・技術者」への大きな一歩となることが期待できる。

2.研修期間  平成27年8月23日(日)~平成27年8月29日(土)(5泊7日)

3.研修場所  アメリカ合衆国 サンディエゴ

4.対象生徒  高校1年SSコース 55名

5.実施内容

①カリフォルニア大学サンディエゴ校

【研修内容】
いくつかの理系研究室や実験室を見学し研究者から実験や研究に関するレクチャーを受けた。昼食をともにして,交流時間を確保した。学生とディスカッションを行うことで,意欲的に学ぶ学生と交わりを持ち,その志と意欲を学び取った。自然科学部教授による特別講義を受け,質疑・応答により学びを深めた。

【効果】
学生との交流,研究室でのレクチャーを通して科学英語の実践の機会を得た。大学レベルでの研究に触れ,今後の課題研究に対する取り組みの姿勢を再確認した。

②サンディエゴ動物園,サンディエゴ動物園サファリパーク

 【研修内容】園内を見学し,動物に触れながら専門飼育員や研究者からレクチャーを受けた。サファリパークでは,2グループに分かれて園内を回り,専門スタッフから動物学の講義を受けた。野生個体が絶滅したカリフォルニアコンドルの保護・飼育を中心に,動物の保護や調査および動物園の意義について学んだ。

 【効果】動物園に遺伝子の保存などの科学的存在意義があることを学ばせ,動物と人間の共存,生態系の維持,種の保存を図る方法などを考えることができた。

③カリフォルニア州立大学サンマルコス校

 【研修内容】附属語学学校学生(留学生)とともに科学英語の授業を受け,その後,学生たちと交流,意見交換を行った。バイオロジー学部生によるプレゼンテーションを聞き,議論を深めた。生物学の教授から特別講義を受け,研究室を案内いただいて,説明を受けた。その後,本校の生徒たちが取り組んでいる課題研究に関するプレゼンテーションを行い,研究の手法,プレゼンテーションの手法などについてのアドバイスを受けた。

 【効果】留学することの意義などを,高い意識を持つ留学生から直接聞くことで,海外で学ぶことを含めた今後の進路を考えさせることができた。英語によるプレゼンテーションや交流,教授によるコメントやアドバイスを得て生徒の英語力およびプレゼンテーション能力の向上を図ることができた。

④現地高等学校(Pacific Academy,High Tech High School)

 【研修内容】現地高校生との科学交流を行った。パワーポイントを作成してプレゼンテーションを行った後,日本文化や課題研究などについて,幅広い内容でのディスカッションを行う。その後,バディーらと校内見学を含めた英語のみでの交流を行い,互いの理解を深めた。

 【効果】英語による交流で,生徒の英語力・プレゼンテーション能力の向上を図った。同年代の生徒と文化や科学を巡る交流を行って,互いの意欲を高めることができた。

⑤現地で働く日本人研究者,薬剤師との交流

【研修内容】
女性研究者および薬剤師から研究や仕事に関する講義・レクチャーを受けた。現地の製薬会社および病院で活躍する邦人女性研究者3名に対してパネルディスカッション形式で,医薬品の開発研究について,アメリカにおける薬学について,研究者の役割について,海外で働くことについてなどのレクチャーを受けた。その後,生徒たちも加わって質疑・応答を行ったり,食事会で交流したりした。海外での研究や仕事について,女性として,命についてなど多岐にわたり,ともに考えた。

【効果】
医薬品や化粧品などの研究開発・販売・処方を通して,科学の成果を人類に役立てることの大切さを学び,今後の研究活動に向けての姿勢を確認させることができた。また,女性科学者・研究者としての生き方を見ることで,自らの将来像について考える機会を得た。

(5)評価

生徒たちは海外に行く喜びと,それとは反対に「英語でコミュニケーションがとれるのだろうか」という不安を抱えての出発であった。やはり帰国後の感想として,英語力の無さを痛感したというものが多かった。しかし,研修地では講義や見学において積極的にメモを取り,交流を図る場面では,英語と格闘しながらも何とかして自分の思いを伝えようと必死に努力している光景が至る所で見られた。研究者・技術者にとって英語が大切であることを再認識し,その姿勢を継続していくことが,これからの課題として明確になったようである。

研究室・実験室の見学や教授による講義を通して,大学での研究に直接触れることで,スケールの違いを感じ取り,良い刺激になっていた。動物園・サファリパークの見学では,事前学習で普通の動物園と異なり,「保護」を目的とした動物園であるということを学び,その視点でしっかり観察することができていた。本校生による課題研究のプレゼンテーションでは,生徒たちにとって大きな舞台で発表する経験が得られ,それが自信につながった。また,第一線で活躍する教授陣からの助言をいただき,今後の研究を進めるうえでの大きなヒントが得られた。そして,研修地で働く日本人研究者および薬剤師3名との交流を通して,「あの人のようになりたい」という生徒も少なくなく,自らの将来像を考えるきっかけとなった。

この研修を通して「科学する心」をさらに育てることができ,これからの目標や課題が明確になり,生徒たちが目指す「有為な女性研究者・技術者」への大きな一歩となったと感じられる。

【2014年度海外研修】

高1 SS 海外研修(マレーシア)

2014年8月22~27日

高校1年生のサイエンスツアーは海外での研修となり,8月22日(金)~27日(水)の5泊6日の日程で,自然豊かなことや新興国として活気のあるマレーシアで行うことになりました。

 

スケジュール
8月22日(金) 関西国際空港より午前11:00,参加者86名は期待を胸にクアラルンプールに向けて飛び立ちました。到着後は現地国内線乗り換えで,最初の研修地コタキナバルへ移動します,国内線でもパスポートの提示を求められるというマレーシアの歴史の一面を体験し,無事到着,ホテルにバスで移動すれば22:00過ぎ,旅の疲れはあるものの明日からの研修に気持ちは高ぶっていました。

8月23日(土) 
いよいよ最初の研修地ラサリアリゾート自然保護区へ,名前の通りリゾート地で好天にも恵まれ素晴らしい景色から始まりました。こちらでは絶滅危惧種であるオランウータンを保護し,森に帰すことに取り組んでいます。講義を受けて,実際の取り組みを見学しました。こちらで昼食後,クリアス川でのテングザル探索のリバーサファリに向けて移動します。結構な距離のため到着は夕方を迎えるころとなりました。ボートに乗り込みマングローブ林の中に懸命にテングザルを探します。大きな鼻とおむつをはいているような白いお尻と尻尾が特徴のテングザルを無事発見,他にもカニクイザル,トカゲ,ワニなども見ることができました。そのころには辺りには暗闇が広がり始めていました。しかし,少し場所を移動すると真夏なのにクリスマスツリー?と見間違う景色に遭遇しました。木にとまっている無数の蛍が発光しているのです。「これを見ただけでも来た値打ちがある。」と感動する生徒が出るほどの幻想的な風景でした。なぜ絶滅危惧種が生まれるのかを学び,考えさせられる1日でした。

8月24日(日) 
コタキナバルでの最後の研修地コタキナバルウェットランドセンターでグループに分かれ,①マングローブの採苗作業,②マングローブの種苗作業③清掃作業,④堆肥の積込作業を体験しました。お天気もよく,暑い中での作業であったり,沼地で思うように動けない中でも頑張って自然保護活動をお手伝いすることができました。夕方にはクアラルンプールに向けて出発,今日は現地のカジャン・フェデラル・イスラム高校の寮に宿泊させていただきます。クアラルンプールの到着が夜遅くであったにも関わらず代表生徒が空港へ,また学校に到着するとたくさんの学生たちが出迎えてくれました。現地高校生と交流会がスタートしました。

8月25日(月) 
寮での生活には生徒一人一人にパートナーがつきお世話をしてくれます。同年代の生徒の英語力には感心させられました。交流会ではお互いにプレゼンテーションを行い,文化の違いや生活様式の違いを理解しあい楽しく過ごすことができました。いつの間にか気分は「日本代表」です。名残惜しい中,クアラルンプール市内の見学に向かい歴史的な建築や建造物を見学しました。夜にはクアラ・セランゴールで蛍の生息地を見学リバーサファリで見たものとは違った幻想的な風景を楽しみました。

8月26日(火) 
研修としては最終日。まずはマラヤ大学を訪レクチャーを受け,充実した設備の実験室を見学し学生たちと交流しました。驚いたのは語学力の高さで日本に留学を希望する学生は日本語が堪能で,語学だけではなく書道や俳句などの文化も体験しながら日本語の勉強に励んでいるそうです。短い時間でしたが,貴重な体験が出来ました。午後からは現地日系企業訪問としてヤクルトとOMAKANEの2班に別れての研修です。ヤクルトは日本でもお馴染みの企業ですが,現地にあるライバル企業との競合や,文化・習慣の違いに苦労されているお話,OMAKANEはソーセージを作る企業ですがイスラム教徒でも食べられるHALALの認証を取るためのお話を聞かせていただき異文化理解について触れることができました。これで現地での研修をすべて終え深夜に日本に向けてクアラルンプールを出発しました。

8月27日(水) 
7時過ぎ関西国際空港に無事到着,日本に帰ってホッとした事,連日夜遅くまで研修活動を行っていたことなどから疲れは最高潮に,しかし、この研修での体験は生涯消えることがない貴重な体験となりました。この経験を今後に活かしていきますとの決意で解散式を行いました。

 

2010年度海外研修

1.目的・仮説
本校のSSH研究課題の柱に,「国際性を高める取り組み」がある。生徒たちの研究内容を海外にも発信し,海外の人たちとの交流を含めて,国際的な視野を広げる。そして,国際的に活躍することができる,感性豊かな女性研究者・技術者の育成を目指している。この目標を実現する上で,海外研修は絶大な教育効果があると考えている。

そこで,早い時期から国際感覚 を身につけるため,これまで高校1年時に海外研修を実施してきた。世界的な課題に先進的な 取り組みを行っている国々を選定し,人類が直面している様々な諸問題を理解し,私たちにできる取り組みを考えさせる。これにより,より強く国際的な諸問題や科学技術に興味を抱かせることができると考えた。さらに,研修には必ず現地の高校生や科学者の方々と英語で交流するプログラムを取り入れ,様々な取り組みや考え方の交流とともに,英語によるコミュニケーションを積極的に行わせることも心がけた。

これまでの4年間は,国際的に最先端の科学技術を駆使し,また環境問題にも先進的に取り組んでいる国・企業を訪問し研修を行ってきた。1期生は,デンマーク・ドイツを訪れ,ヨーロッパ最古級の科学教育の場と最先端の環境対策に感動して帰ってきた。2,3期生は,環境対策の先進地で,大規模な先端産業の拠点であるアメリカ西海岸を訪れ,名門スタンフォード大学で実習し,研究者との交流や最先端の教育に強く感化された。4期生は,北欧フィンランドで研修を行い,国を挙げての環境対策とともに,本校でも一部導入しているフィンランド教育を目の当たりにした。これらの研修の成果・評価は,生徒たちが作成した海外研修報告書や,アンケート結果などからも分かるように,当初の目的を十分に達成できていたと自負している。 これに伴い,今年度の研修地は,個々の訪問先に違いはあるものの,昨年と同じフィンラン ドを選定した。このフィンランド研修では以下の3点に主眼を置いた。

(1)急成長を遂げた国の政策と,人々に根づいた環境対策を調査する。

(2)自然環境と調和しつつ,最先端の高度な科学技術を実現した取り組みを調べる。

(3)現地の高校生との交流や科学者・技術者との交流を通して,フィンランド教育がもたらした成果を理解する。

フィンランドは,過去4年間に得られたような研修成果が十分に期待できる研修地である。加えて今年度は,現地の大学の日本人留学生との交流や建築視察,水質検査を行うなどの,新たな試みも取り入れ,これまでの成果にプラスして,自分たちの考え方と国際的な考え方の違 いを考察したり,今後の取り組みに具体的に応用できる研修を行うことを目的とした。そして この研修により,国際的なものの見方・考え方を理解し,現在の日本と比較したり,あてはめ ることができるかということも,考えられるようになることを期待した。また,先進的な取り 組みをしている国々に興味を持たせ,自らが国際的に活躍できる人材になるよう,高い意識を 持つことも期待した。

2.研修日時 平成22年8月22日(日)~8月27日(金)

3.研修場所 フィンランド共和国 ヘルシンキ エスポー

4.対象生徒 高校1年10組 SSコース 43名 ,1年3組 Iコース 1名

5.実施内容

(1)エスポー市立オラリ中学校・高等学校訪問

学校の概要説明を受けた後,6つのグループに分かれてオラリ中高の生徒に学校内を案内してもらった。いろいろな授業や施設を見学しながら,個々に案内の生徒に英語で質問をしながら交流することができた。フィンランド教育の実情を知ることができ,少人数制やIT機器を駆使した授業,その他優れた教育システムに感銘を受けた。ただし,個々の生徒の自己管理が徹底されていなければ教育効果が上がらないことも実感できた。

あらかじめ,日本で用意しておいた日本に関するプレゼンテーションを,オラリ中高の生徒に英語で披露した。プレゼンテーマは,「日本と武庫川と私たち」「日本の環境問題と対策」「日本の科学技術」の3テーマ。時間の関係で,質疑応答の時間はとれなかったが,カイサ ティッカ校長先生には大変立派なプレゼンでしたと言っていただいた。

(2)ヘルシンキ大学訪問

4つあるキャンパスのうち,理系の学部が集まった2つのキャンパスを訪問した。

カンプラキャンパスでは,日本人留学生の方と交流することができた。フィンランドでの学生生活や大学の教育システム,研究や論文の書き方で日本と大きく違うところなどを,楽しくお話しいただいた。ただし,このお話しの中でも自己管理の徹底が強調されていたことが生徒たちの印象に強く残った。また,図書館や研究室の見学もさせていただき,国と  大学が中心になって,子どもたちに実験体験をさせるシステムを説明していただいた。フィンランドの科学教育の力強さを感じた。

ヴィッキキャンパスでは,食物研究所のハンヌ サロヴァーラ教授に,ご自身が研究されている新しい機能性食品について講義していただいた。あわせて,ご自身の経験から,一つの研究を進めるためには多種多様な知識がなければ研究を進めることはできない。研究とはそういうもので,一つのものから広い視野を持って学習・研究することが必要であるとお話しいただいた。

(3)フィンランド建築視察

フィンランドで活躍する女性建築家のナガヤ トモコ氏に説明していただきながら,ヘルシンキ市内の建築物を見学した。北欧ならではの建築物や,フィンランドを代表する世界的な建築家アルバ アアルトの建築物の特徴などを説明していただいた。

 

(4)フィンランドエネルギー会社 Fortum社訪問

ヨーロッパ有数の環境配慮型エネルギー会社であるFortum社を訪問した。北欧で最大の発電量を誇る電力会社でありながら,環境に徹底的に配慮した発電方式を,多方面の国や企業と共同で研究している。また,子どもたちにエネルギーの大切さを理解してもらうために,楽しみながらエネルギーに関する学習ができるゲームを学校に無料配付するなどの取り組みを紹介していただいた。発電所の施設見学もさせていただいた。

 

(5)フィンランド国立技術研究センター VTT

産官学が一体となって運営する研究施設であるVTTを訪れた。広範な技術を扱う国立の受託研究組織でるあるが,運営費の3分の2は顧客である企業から出されている。各分野のトップクラスの研究者が集まり,多くの企業の様々なニーズに研究力で応えている。アアルト大学内に施設があり,大学とも連携した研究がなされている。厳重なセキュリティー体制が取られており,施設見学はできなかったが,VTTの取り組みを丁寧に説明していただいた。

(6)フィンランド科学センター

ヘウレカヘウレカは,いわゆる科学館である。しかし,子どもたちに科学の楽しさを体験させながら教えるだけではなく,国と学校とも連携し,子どもたちに科学を教える立場の教師に対する研修プログラムを多く持つ。フィンランドの科学技術力を支える教育力の力強さを感じた。

 

(7)ヌークシオ国立公園 フィールドワーク

フィンランド森林協会元会員のユリ マッコネン氏に説明していただきながら,フィンランドの森林環境をフィールドワークで学んだ。北欧の森の植生から,森の利用方法や保全方法など,北欧に暮らす人々の森とのつきあい方,森に対する考え方を教えていただいた。日本から持参したパックテストを用いて,森の中にある湖の水質検査を試みたが,一カ所でしか検査することができず,考察するに値しなかった。

 

 

 

6.まとめ・効果・評価
各研修地での成果や評価は次の通りである。

(1)エスポー市立オラリ中学校・高等学校訪問

フィンランド教育に感銘を受けながらも,このまま日本に導入することができるか,また,日本の教育の良さも再認識することができた。プレゼンに関しては,日本で事前にプレゼンを考え,作り上げていく過程から,発表に至るまで,大変苦労の連続であったが,日本や世界の科学技術や環境問題を再認識し,現地での発表を無事に終えることで,大きな達成感を味わうことができた。

 

(2)ヘルシンキ大学訪問

カンプラキャンパスでは,自分たちと年の近い先輩が,一人で海外で学んでいる姿を見て,尊敬のまなざしで見ると同時に,自分たちも海外で学ぶことができるかもしれないと考え,具体的な留学の方法やその他の海外の大学ことも,積極的に質問していた。そんな中で,日本の高校のレベルはかなり高いものであることを言われ,自信にもなったようである。

ヴィッキキャンパスでは,大変難しい講義であったが,生徒たちは真剣に聴き,メモを取りながら何とか理解しようとつとめていた。講義後,講師の先生を取り囲み,必死で英語で質問していた。快く質問に応じる姿に,生徒たちは科学者の考え方・業績のみならず,様々なことに対する姿勢にも感動していた。

 

(3)フィンランド建築視察

普段の学習ではなかなか馴染みのない建築学というものを意識するきっかけとなった。地域や気候に適した建築物や,建築家のこだわりなどを見聞きし,建築学の奥深さを知った。建築学に興味を持った生徒も少なくない。

 

(4)フィンランドエネルギー会社 Fortum社訪問

大手の企業でも,常に環境に配慮した取り組みを行っており,人々に根づいた環境保護意識に気づかされた。また,将来を担う子どもたちに楽しみながら教育を施す企業としての責任の果たし方も知ることができた。自分たちが将来科学者になったとき,環境や地域の方々に対する取り組みも考える良い機会となった。

 

(5)フィンランド国立技術研究センター VTT

トップクラスの研究者が集まる研究施設を訪問することができ,感激した生徒も多かった。 国立の研究所でありながら,大学とも連携し,企業が出資するなど,まさに産官学が一体となった研究施設を目の当たりにした。そして,ここでも日本ではどうか,このシステムを日本に あてはめることはできないか,また,研究とは?ビジネスとは?という疑問に,研修後のディ スカッションも白熱した。高校1年生の生徒たちにはかなり背伸びをした研修であったが,非常に刺激的な経験をさせていただいた。

 

(6)フィンランド科学センター ヘウレカ

単なる体験型の科学館ではなく,教師を教育するプログラムを多数持ち,フィンランドの科 学教育の力強さを感じた。ここでも,日本との違いをしっかり意識し,先進的な取り組みをどのようにすれば我々に反映させることができるか,ということを考えるきっかけとなった。

 

(7)ヌークシオ国立公園 フィールドワーク

日本の森林との比較もでき,自然とふれあえる体験ができたことは,非常に有意義であった。 生徒たちの印象にも強く残る研修であった。水質検査に関しては,日本でも実施することができ,フィンランドのものとの比較が楽しみであったが,現地ガイドとの打ち合わせが不十分であったこともあり,課題が残った。今後は,研修プログラムの中に大きな位置づけとして取り入れ,来年度以降につなげて実施して欲しいと思う。

 

以上のように,今年度の海外研修も生徒たちにとって非常によい刺激を与える形で終えることができた。各研修地で感銘を受けただけではなく,明らかに「世界では?」「日本では?」「今の自分たちは?」「将来の自分たちでは?」ということを考えられるようになり,国際的な諸問題を常に意識し,その対処方法を自然に考察するようになってきていると感じる。また,そのために必要な英語をはじめとする語学の習得に関しても,その必要性を強く感じるようになり,以降の学習で積極的な姿勢を見せ始めている。研修内容を周囲の人たちに発表する機会も多く設け,生徒たちもモチベーション高くそれに臨んでいる。このことは今年度のみのことではなく,これまでも同じような傾向が見られた。明らかに研修前後では,世界に対する意識の持ち方,英語力の習得にかける力の使い方,そして,問題を解決しそれを周囲に広げようとする姿勢に違いが見られる。加えて,先進的な取り組みをする国々やその取り組み自体にも興味を示すようになってきている。目の前にある小さなことにも興味を持ち,それを論理的に考えられるようになり,科学的な目線で物事を見ることもできるようになりつつある。他者との意見や考え方の違いなどは,意識してディスカッションさせるようにし,他者を抑えるのではなく,その考え方を取り入れ,そして,新たな見解を導き出す練習も積めるようになっている。 これらの成果は,どんな研修よりもこの海外研修が大きく関与しているであろう。

今後も,研修地の選定や,研修内容の再考は当然必要であるが,これまでの研修を概ね踏襲していけば,まだまだ効果は期待できるであろう。


2009年度海外研修

1.目的・仮説
本年度で4回目となる海外研修である。高校1年生のこの時期に行う目的の一つに,世界を見ることで今後の高校生活・研究生活に対して大きな刺激を受けてくれればという思いがある。そして,今回は昨年とは目的地を変え,世界一の学力を誇るフィンランドでの研修とした。いま,世界で注目されているフィンランド教育の一端を自分たちの目で見るための高校との交流・大学などの教育機関の視察,ノキアをはじめとする企業の見学,そして森と湖の国をじっくりと味わうこと。大きな3つの課題を背負っての研修である。訪問高校でプレゼンテーションを行うことで,コミュニケーション力を磨くことができる。大学の現状を見ることで今後の研究活動や進路を考えるきっかけとなる。先端企業を見学することで科学がどのように活かされているかを知ることができる。森に入ることでフィンランド人の生き方・ものの考え方に触れることができる。これによって生徒たちが何かを感じ,変貌を遂げてくれるのではないか。このような思いでこの研修を実施した。

2.研修日時 平成21年8月24日(月)~8月29日(土)

3.研修場所 フィンランド共和国 ヘルシンキ

4.対象生徒 高校1年10組 SSコース 39名,1年8組 Iコース 1名


実施内容

(1)エスポー市立オラリ中学・高等学校訪問

学校の説明を受けた後,オラリ高生の案内で校舎内を見学,授業見学も行った。その後,環境問題に関するプレゼンテーションを行う。多くのオラリ高生が参加し意見交換をするなど,有意義な交流ができた。

(2)科学センター・ヘウレカ訪問

文科省と企業がスポンサーとなって設立されたヘウレカは,自分で実験しながら楽しく学ぶことができる施設である。その活動内容の説明を受けた後,施設内を自由に見学した。フロアーには何人ものコーディネーターの方がおられ,必要に応じて適切な説明を(勿論英語で)受けることができた。実際に手で触れてその原理を考えることができた。また,疑問をその場で解決することの爽快さを味わいながら楽しく見学することができた。

(3)VALIO社機能性食品開発部訪問

「1番,1等賞」の意味を社名にしたバリオでは,2名の研究者から講義を受けたが,大学と企業が一体となって研究を進めていること,環境への配慮を行っていることなどのお話を聞くことができた。特に,男女平等の研究システムができあがっていることに,生徒達は感銘を受けたようであった。製品の試食・試飲もさせて頂き,研究所の内部も見学することができた。

(4)国立ヘルシンキ工科大学訪問

化学科主任教授から大学の研究に対する姿勢・考え方などの説明を受けた。また,ここに留学している日本人学生の方に,大学生活や留学の楽しさ,苦しさなど有意義なお話をして頂いた。ここでも産学一体のシステムができていることを知ることができたが,フィンランドという国の教育についての考え方が凝縮した大学であるとの印象を持った。

(5)NOKIA本社訪問

世界のノキアに高校生が入れるということで期待をふくらませての訪問であった。現在進行中のシステム開発に関する話など,興味深いものばかりであったが,「世界は一つ」の考えのもとに,学生に対して教育を行っていること,アフリカでも教育を行っていることなど,教育先行投資を行い,その成果を自らに還元するシステムが実行されていることなどが特に興味をそそられた。

(6)アルテック社訪問

店舗内でアルテック設立の経緯から現在に至るまでの流れを説明して頂いた。アルテックの家具が現在でも古さを感じさせないこと,特許を取っているL脚の話など,おもしろいお話を聞くことができた。その後,店舗内を自由に見学させてもらった。ここでも女性の多さが(社長も女性である)目立った。

(7)国立公園ヌークシオ散策

講演までのバス車内で,案内のマッコネン氏からフィンランドの森についてのお話を伺った。フィンランドの歴史は森の歴史であるとのことだった。森の中を歩いたのは1時間あまりであったが,鳥の声を聞いたりベリーを取ったり湖の畔でお話を聞いたりと,一瞬ではあるが森と共生する時間をもてたように思う。森と湖の国フィンランドを実感できる散策であった。


6.
まとめ・効果・評価
さまざまな施設を訪れたり講義を聴いたりする中で,教育問題や環境問題,女性問題に対してこれまで以上に真剣に向き合うことができた。また,これから学ぼうとすることが,自分の将来,日本の将来にどうつながっていくのか,自分は何がしたいのか,何ができるのか,何をしなければならないのかなどを考えることで,科学者・研究者としての第一歩を踏み出すことができたのではないかと思う。また,それぞれの訪問で,女性の活躍を目の当たりにし,女性にも活躍の場が与えられているフィンランドをうらやましく思うだけではなく,日本もそうならなければならない,自分たちがその先駆けとなるという強い思いを語り合うことができたことは,女子校である本校が期待した以上のものを生徒自身が気づいてくれたのではないかと思う。その意味からも有意義な研修であったと考える。全体を通して日程は過密ではあったが,普通ではできない特別な経験をすることができた。さらなる飛躍を期待したい。2008年度海外研修
2008年8月25日から30日までの6日間,アメリカ西海岸のサンフランシスコへ「環境問題とエネルギー」,「最先端の科学」についての研修を実施しました。

スケジュール
1日目 ~地熱発電所~
サンフランシスコに到着してすぐ,カリストガ市にある地熱発電所を訪れました。ここでは地熱を利用したクリーンなエネルギーによる発電を見学しました。また,事前に生徒が用意していた英語のプレゼンテーションを行い,エネルギー問題について施設の方と意見交換しました。

2日目 ~NUMMI,カリフォルニア・エナジー・コミッション~
 午前に,トヨタとGMとの合弁会社であるNUMMIを訪れました。働いている方々が,仕事に対して日本の精神を理解,尊重し,とても楽しんで仕事をしていたのが印象的でした。
午後には,カリフォルニア・エナジー・コミッションを訪れ,石油に代わる新しいエネルギーであるバイオエタノールについての講義を受けました。環境についてお互いの考えや取り組みを発表し,これからのエネルギー問題について話し合いました。
予定より少し早く終わったので,アーノルド・シュワルツネッガーさんが州知事をしているカリフォルニア州庁舎を見学しに行きました。残念ながら本人にお会いすることはできませんでした。

3日目,4日目 ~スタンフォード大学~
世界屈指の名門校であるスタンフォード大学にて,Keith Devlin教授からスタンフォード大学の歩みや,その精神についての講義を受けました。また,教授から「失敗を恐れるな。失敗は恥ではない。」と聞き,何事にもチャレンジすることが大切だということを教わりました。さらに,スタンフォード大学に留学中である矢田愛医師から卵細胞について,大谷顕史医師からは再生医療,幹細胞の研究の世界の最新事情についてのレクチャーをそれぞれ受けました。また,Carolyn Gale 講師には私たちの英語のプレゼンテーション(5班)を聞いていただき,評価していただきました。

地熱発電所 NUMMI
カリフォルニア・エナジー・コミッション カリフォルニア州庁舎
Keith Devlin教授 レクチャー 矢田愛医師 講義
地熱発電所 班 NUMMI 班
バイオエタノール 班 スタンフォード大学 班
再生医療・幹細胞 班 大谷顕史医師 講義




2007年度海外研修
2007年8月20日から8月25日までの5泊6日、アメリカのサンフランシスコとシアトルへ「環境・エネルギー」と「先端技術」についての視察旅行を実施しました。

サンフランシスコ

  ミュアウッズ国定公園で樹齢1000年以上に及ぶレッドウッド(セコイア)の巨木を観察し、自然の働きと自然保護を学びました。
NUMMI(トヨタ自動車とGMの合弁会社)ではトラムという工場内見学専用の車で流れ作業の工程を見ました。4つのスローガン(Jidoka,Kaizen,Muda,Kanban)のもとに一致団結して自動車を組み立てていました。
インテル本社1階のインテル博物館では、マイクロプロセッサーの歴史や仕組みについて学びました。
スタンフォード大学では、数学者のデブリン教授と日本から来られている女性科学者の講義を受けました。デブリン教授は、失敗を恐れず挑戦することの大切さを強調されました。
クライン・セラーズ・ワイナリーでは、屋根一面に張られたソーラーパネルを見学し、太陽電池の有効性を説明していただきました。この日は、ちょうどぶどうの収穫の初日でした。
アルタモント・パス・ウィンドファームでは、発電各社が競って風力発電機を建てている地帯を見学しました。約8,000基あるそうです。

シアトル

教育提携校であるチャールズライト校を訪問しました。そこでまず、薬剤師になるためのレクチヤーを受けました。日本とは違う教育課程や、医者との関係を教えて頂きました。その後、四人の高校生の案内で校舎を見学し、交流会をもちました。この会では、私たちがエネルギー、ゴミ、自然保護の3つの分野についての英語のプレゼンテーションを行い、それをもとにして意見交換をしました。

ゴールデンゲートブリッジ ミュアウッズ国定公園
NUMMI インテル博物館
スタンフォード大学 デブリン教授レクチャー
クラインセラーズワイナリー アルタモントパス風力発電
シアトルの市場 チャールズライトアカデミー
薬剤師レクチャー 交流会

 



2006年度海外研修
2006年8月21日から26日までの5泊6日、ヨーロッパ・デンマークとドイツへ「環境・エネルギー」についての視察旅行を実施しました。
デンマークでは世界最大の洋上風力発電所を見学、現地高等学校クリスチャンハーフェンを訪問して、環境問題についての意見を交わしたり、軽食をとりながらの交流会を持ちました。
ドイツでは、ハイデルベルグ大学でドイツの教育システムについて受講。古城にある薬事博物館で薬の歴史を学びました。ドイツの南部、フランス・スイスに近いフライブルクでは環境保全政策として実施しているプラスエネルギーハウス(団地)を見学しました。それによって、ソーラーについてのセミナーがよく理解できました。エコステーションにおいても、土中や草木に棲む虫を観察しては自然を理解して人間の生活環境を考えていく大切さを感得しました。
事前に研究課題を持って臨んだこの視察旅行。「日本の環境政策はまだまだ不十分」「知らないことがいっぱい。知る楽しさを知った」などの感想が聞かれました。

デンマークの港町 デンマーク国会議事堂
人魚姫の像 風力発電タービン
風力発電所・ミドルグロン 低エネルギー社会レクチャー
デンマーク現地校合唱 ハイデルベルクセミナー
薬事博物館前 黒い森 観察
プラスエネルギーハウス ソーラーセミナー