高校1年 サイエンスツアー MS通信 第11号

3日目

高校1年CSコースのサイエンスツアー最終日は、千葉県柏市の東京大学柏キャンパスを訪問しました。
東京大学柏キャンパスは、東京大学の21世紀における新たな学問の発展に向けた構想に基づいて建設された、「本郷」「駒場」に次ぐ第3の主要キャンパスです。既存の学問を融合して新規の学問分野を創出する場として設置され、学生と教職員をあわせて計3,100人規模のキャンパスです。ノーベル賞受賞者の梶田教授が所属する「宇宙線研究所」をはじめ、宇宙工学をはじめ理系学問を主に研究する数多くの附設研究所とその関連施設が立ち並び、新たな知の創出に関する研究が日々行われています。
午前中は「東京大学 物性研究所」を訪問しました。まず超強磁場実験棟を 金道 浩一 先生に解説していただきながら見学しました。偶然、研究室の学生さんが、超高磁場で非金属を金属化する実験も見学することができ、貴重な体験となりました。次に、宇宙空間での物質の振る舞いを観測したり、宇宙空間での化学反応を再現させるための実験装置も見せていただきました。この装置は学生さんの発想と設計でできた装置で、その成果は特許申請中だそうです。両研究室とも、大学の先生のみならず、学生さんたちが世界をリードするような研究をされていることにも、生徒たちは刺激を受けたようでした。

最終日の午後は、午前中と同じ東京大学柏キャンパス内にある、大気海洋研究所を訪問しました。
まず、阿部 彩子 先生に地球の大気と海洋の分析から地球環境の変動を探ることに関する講義をしていただきました。大気や海洋の変動が、太古の昔から地球環境の変動に大きく関わってきたこと、また、近年の気候変動に関する分析と、人々の産業活動との関連を分析していくことで、現在や近未来、また遠い未来の地球環境をも予測しようとしている、といった古気候分析についてのお話しを聴かせていただきました。また、ここでも大学院生のお話しを聴くことができ、大学生とその先の大学院についてもイメージが沸くようになりました。
次に飼育実験室を案内していただきました。飼育環境によって生物たちがどのように成長していくか、飼育環境が生物たちにどのような影響を及ぼすかなどを遺伝子操作もした生物を使って実験していました。
最後に、加速器質量分析装置を見せていただきました。加速器質量分析装置は、日本にはここだけにしかなく、クジラのヒゲやサメの歯を、炭素の放射性同位体を用いて年代測定を行っていました。高校の化学の授業で学んだ内容でもあったので、生徒たちも目を輝かせて説明を聴いていました。また、多くの質問も飛び出し、予定時間よりも時間を延長しての研修となりました。
これで、3日間の研修がすべて終わり、帰路につきました。3日間、事前学習は行って臨んだものの、どの研修地でも、予想以上に難しい内容で少し困惑していましたが、多少の背伸びをした充実した研修になったと思います。

2日目

高校1年CSコースのサイエンスツアー2日目です。午前中は、茨城県つくば市の「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」を訪問しました。まずは、「食と農の科学館」で見学研修を行いました。日本の農業と食に関連した新しい研究成果や技術を職員の方に説明していただきました。また、パネルや模型などの展示物を見て、私たちが目にする農産物がどのように生み出されたものなのか、また、進歩する農業技術、美味しく体にも良い機能性の新品種の紹介など、食や農業に関する学びの場となりました。日本の農林水産業の持続的な発展を支えている研究成果を紹介するエリアでは、映像やパネルを通じ、食料の安定供給に寄与する研究開発や、日本の高い技術力を生かした高品質、高付加価値を持った農産物や食品の研究等についてわかりやすく紹介していました。
 続いて「遺伝資源研究センター ジーンバンク」を訪れました。ジーンバンクは、全国各地にある植物・微生物・動物各部門のサブバンクと連携して、日本の食料・農業上の開発および利用等に貢献するための生物遺伝資源の国内外からの収集・受入、増殖・保存、特性評価、配布および情報の管理提供、また生物遺伝資源の高度化のための試験研究を行うとともに、海外の試験研究機関等との協力により遺伝資源の保全に取り組んでいます。実際に何十万種もの様々な農作物の種子の保管庫を見せていただいたり、発芽試験をしている様子も見ることができました。普段何気なく口にしている食材でも、このように多くの人々や研究機関において、研究対象であったものが提供されているものも多く、生徒たちも非常に身近で奥の深い研究分野であることを理解できたように思います。

高校1年CSコースのサイエンスツアー、2日目の午後は、茨城県つくば市の「筑波大学附属病院 陽子線医学利用研究センター」を訪問しました。がん治療の様々な治療法のうち、効果が大きく、他の放射線に比べて副作用の少ない陽子線治療について、センター長の 榮 武二 先生にまずその原理やセンターの概要を説明していただきました。 施設見学では、多くの患者さんが治療に訪れており、残念ながら陽子線を制御する巨大な装置の実物を見ることはできませんでしたが、模型を用いて説明していただいたり、「制御室」のモニター越しに治療のようすを見ることができました。次に、医学物理士として勤務する 河野 先生 に医学物理士としての病院でのお仕事についてお話ししていただきました。病院に勤務する人は、医学部や薬学部出身、看護関係の学校を出た人たちだけではなく、理学や工学系のいわゆる技術者も多くいることも、実際に現地に行ってみて分かったことでした。生徒たちの中には、医療関係の仕事に就きたいと考えている生徒も多く、このことは進路選択の一つのヒントになったと思われます。その後、筑波大学附属病院で放射線腫瘍科の医師として勤務する 沼尻 晴子 先生に、現在に至るご自身の経験や体験を交えた進路選択に関するお話をしていただきました。女性医師としての生き方、結婚と出産と仕事と家事など、生徒たちも近い将来訪れる進路選択をしっかりと意識しながら聴くことができました。医療現場で働く女性の生のお話しを聞く機会をたくさん用意していただきました。

サイエンスツアーも2日目の研修を終え、本日も報告会に臨みます。みんな元気です。

1日目

高校1年生CSコースのサイエンスツアーが、8月7日(月)~9日(水)の2泊3日の日程で始まりました。今回のサイエンスツアーのテーマは、「近い将来の私たちの姿」で、関東方面で主に大学や研究所を訪問し、女性科学者・研究者を目指す生徒たちの近い将来の姿を想像させることを目的としています。初日の今日は、東京都目黒区の「東京工業大学 地球生命研究所(ELSI)」を訪問しました。

ELSIは、地球や惑星の研究を通じて、生命の起源を追求する研究所で、地球そのものや惑星・宇宙と生物の研究者が、相互にコミュニケーションを取りながら研究をしています。東京工業大学独自ではなく、海外の研究機関も出資して設立された研究所で、所属する研究者の約半数が外国人研究者です。

初めにそれぞれの研究室を丁寧に解説していただきながら見学しました。所内のあらゆる場所が国や研究分野を超えた実験やコミュニケーションを取ることができる場で、午後3時には「ティータイム」と称して、各研究室からパブリックスペースに集まり、その場で様々な情報交換をします。そのスペースの壁はすべて黒板で、その黒板も使いながら議論を展開することもあるそうです。生徒たちにとって難しく堅苦しいサイエンスも、そのような場で様々な分野の人たちが和やかな雰囲気で議論されているようすは、まさに外国の研究所を思わせるものでした。また、外国人に対して日本の雰囲気を味わってもらうための和室があったり、エントランスの床に何十億年も前の鉱物が埋められたスペースもありました。

次に女性研究者である 濱野 景子 先生 に惑星科学に関する講義をしていただきました。生命の起源に迫るため、地球という惑星誕生の時期やメカニズム、それを通して他の天体の誕生や形成についても、最新のデータや分析結果を用いて、非常に興味深くお話しをしていただきました。宇宙を見て地球を知る、地球惑星科学、中でも、地球をはじめとする太陽系の惑星が「ジャイアントインパクト」と呼ばれる小惑星の巨大衝突で誕生したこと、生まれたての地球を知るためには、現在生まれつつある太陽系外惑星を調べることで成されるのではないか、という学問・研究について、スライドや動画も用いて非常に分かりやすく説明していただきました。スライドに関して生徒たちからの質問も飛び出し、濱野先生も「よく見てましたね」と感心されていました。

 夕食後、生徒たちはホテルで報告会に臨みます。その日一日学んだことをグループごとにまとめて発表し、他のグループの人たちと質疑応答を行います。