高2 CSコース海外研修(アメリカ)4日目

今日は朝からカリフォルニア州立大学サンマルコス校で研修をしました。

2名の生物学の先生から講義をしていただきました。
はじめはBiological Science の教授 Matt Escobar先生からBiotechnologyについてのお話です。
Biotechnologyは3つに分けることができ、
 (1) Green biotechnology
  環境にやさしい技術を用いて、生物資源を有効活用する現代のバイオテクノロジーの分野
 (2) Red biotechnology
  医療や製薬分野で生物技術を活用する技術分野
 (3) White biotechnology
  化学産業においてバイオテクノロジーを活用して、工業原料やエネルギーなどを生産する技術分野
をいいます。

Escobar先生は2つ目のうちのAgricultural biotechnologyを専門としており、遺伝子組み換えによって、その作物を改良する研究をされています。英語での講義のため、これがどのような意味なのかリンゴの木を例え、「あなたがリンゴの木を育てるならば、どのような木にしたいか?」という問いを投げかけてくださり、生徒たちは「おいしいリンゴ」「たくさん実のなる木」「リンゴが病気にならない木」「風に強い木」「虫に食べられない木」を作りたいと答えていました。
Escobar先生はこの中で、biotechnologyを使って叶えることがあるとおっしゃり、仕組みを説明してくださいました。
遺伝子組み換えがこれほど素晴らしい科学にも関わらず、インターネットの画像検索で「Genetically Modified Organisms(遺伝子組み換え作物)」を検索すると、マイナスな印象を与える絵や写真ばかりが出てくるのを見せてくださいました。これはどれも真実ではないにも関わらず、なぜこのような検索結果に至るのかを次の通り挙げていました。
・Fear of un-natural
・Fear of new technology
・Fear of what we don’t understand
・Emotion can be much more powerful than fact
遺伝子組み換えはノーベル賞やWHOでも、育てることも食べることも安全であると認められているのに、と残念そうな様子でした。

その後、ご本人の研究内容「くるみの栽培」を紹介してくださいました。セントラルバレーは世界一の農産業地と言われており、くるみの世界シェアは25%を占めています。
植物もがんになるため、植物のDNA内でがんがどのように大きくなるのかを把握し、これに対して遺伝子組み換えでがんを止める研究をしているそうです。実際にどのように遺伝子組み換えをしているのかを具体的に説明してくださいました。
遺伝子組み換えによって、がんを止められた時はチームで大盛り上がりしたと語ってくださいました。
研究をここまで進められましたが、今直面している問題は、遺伝子組み換え作物への理解が世界に広がっていないため、世界シェア25%であるくるみを他国へ輸出するのに、遺伝子組み換えをしたものを輸出できないことです。よって、遺伝子組み換え作物の安全性をもっと広めたいとおっしゃっていました。

質疑応答の時間では、生徒から興味深く、レベルの高い質問が続きました。

次は “Immune Suppression in Obesity and Type 2 Diabetes” をテーマとし、Julia Jameson先生の研究内容を聞きました。

アメリカにおける肥満に関する社会問題の背景が説明され、皮膚の構造についての説明を聞きました。皮膚の中に免疫細胞があり、傷を負ったときにどのように回復するのかどうかについて、T細胞に焦点を当てて、教えてくださいました。
マウス実験で、T細胞の有無によって、回復にかかる時間も異なることが分かったそうで、そのメカニズムを説明してくださいましたし、そこから肥満と免疫の関係性の研究に繋げていったそうです。
肥満のネズミは引き締まったネズミに比べると、T細胞も、他の細胞も少なく、肌の分厚さも薄いこと、また糖尿病がT細胞に影響することもわかったそうです。また、これはすでに人体でも確認したそうです。

こちらも質疑応答の時間は、生徒からたくさんの質問が続きました。

ドーナツタイムを挟み、次は本校生徒の課題研究の発表タイムです。

Colorless and Transparent Planarian Flatworms

Processing of Plant Powders into Building Materials

1月末にあった探究発表会を終えてから、クラス内でどの班が英語で発表するかを決め、それから英語によるプレゼンテーションの準備に励みました。この研修前には、期末考査もあったため、十分な時間を取ることができませんでしたが、どちらの班もそれを思わせないくらい、自分たちの研究に誇りを持って、堂々と英語で発表しました。先生方から質問やアドバイスをいただくことができました。

その後、Julia Jameson先生の研究室を見学させていただき、昼食を済ませたあとは、キャンパスツアーに向けてアクティビティの説明をしていただき、大学生とキャンパスツアーへ出かけました。いくつかの部屋を案内していただきながら、生徒たちは出会う大学生に質問をしました。この研修期間、たくさん英語のシャワーを浴び、頑張って英会話のやりとりをする機会もあったため、生徒たちは積極的にキャンパス内を歩く大学生に声をかけていました。

その後、セミナー室へ戻り、しばらくグループごとに大学生との交流を楽しみました。

次に2名の日本人薬剤師の方々にお越しいただき、お話をしていただきました。

1人目はKaiser Permanente Medical Centerの大友 千絵子先生から、「がん専門薬剤師の仕事〜英語のちから〜」をテーマとしたお話でした。
Interactiveな会にしたいということで、全員の名前を聞いてくださり、講義は始まりました。
日本の大学に在籍中の頃、薬学部は4年生だったため、さらに学びたいと思い、アメリカの大学院へ進学されたそうです。
次にご自身が高校生の頃の英語に対する思い、イメージを聞かせてくださいましたが、特別な思いや得意科目であるというわけではなかったようです。

ここから薬学の話が始まりました。
(1) アメリカの薬学教育の歴史
(2) アメリカの薬学教育制度
 ・授業の風景
  (写真入りで説明)
 ・Pharm.D. 学生の1日のスケジュール
 ・4年生(最終学年)にある臨床実務実習の説明
 ・PGY1 薬物療法レジデンシー教育の紹介
 ・全米のPGY2がん専門薬学レジデンシープログラム
(3) プログラム以外の活動
 FUNDRAISER(募金活動)
 東日本大震災が起きたときに活動されたそうです。ご出身が東北エリアで、当時時差を踏まえて6時間ほどは家族と連絡が取ることができなかっ他ことや、アメリカから映像で現地の様子を見るたびに、しんどくなるほど胸を痛めたそうです。その後アメリカの赤十字団体を通じて、この活動に取り組まれたことを教えてくださいました。
(4) アメリカのがん専門薬剤師の仕事内容

そして、次は英語学習についての話に入りました。大友先生は「英語力は人間力〜どうやったら英語ペラペラになるのか?〜」を元に話をしてくださり、最後にメッセージを送ってくださいました。
(1) とにかく行動する!
 成功する人と成功しない人の違いを知る
 →成功する人は成功するまで挑戦し続ける

(2) 読書をしてください
 ・メリットだらけの読書
 ・6分の読書でストレスが最大68%以下
 ・ジャンルは問わない

2人目はMURAI Masako先生より、”Thrive, not survive, in the US”をテーマとしたお話でした。

高校生の頃には「人を助けたい」から医者になりたいという夢を持っていたそうです。医学部への進学を考えたとき、トレーニング中に「基礎研究をやらせてほしい」とお世話になっていた教授に話したそうです。当時、コアな人が取り組む内容だったそうですが、自分の夢の原点を考えると、治らないがんでも救える人になるためには、必要だと考えたそうです。
日本でずっと研究を続けてきたそうですが、さらに患者さんを助けるため特許を取って、研究に取り組もうとした時、なかなかあらゆることが認められず、渡米することを決めたそうです。積み重ねてきたキャリアや経験を踏まえると、渡米するよりも、日本にいる方が給料は断然良かったそうですが、自分の信念により決断したそうです。

渡米後、積極的に製薬に関わっていかれたそうですが、製薬において薬が認可されるためには3,000人に治験しなければならないなか、Masako先生は20人程度の患者さんにしかできない状況で、薬を生み出し続けられるのだろうか?と考え、企業に就職することを決めたそうです。そして、次のステップとして何を思い描いているのか?という投げかけをしながら、「自分の情熱をもっとたくさんの人に伝えたい」といって、今回の機会がとても嬉しいとおっしゃっていました。

次に薬の開発の展開について教えてくださいました。

一旦質問タイムを挟み、さまざまな角度から質問があり、そのあとは最後のメッセージとして、日本企業がアメリカに進出した時の話や、The Growth Journeyのマップを見せながら、何事にも積極的に挑戦することの大切さを教えてくださいました。

その後、生徒たちは二手に分かれて、座談会形式で話をする機会をいただきました。竹上先生がMurai先生に「なぜそこまでバイタリティ溢れて、全てやり遂げていけるのでしょうか?一体何者なんだ?と思うばかりなのですが・・・」と声をかけると、Murai先生は「自分の原点は人を助けたい想いで溢れているのに、医者としてつとめていた時に、患者さんが亡くなる前に『先生、治る薬を作ってよ!』と言われるたびに、心に突き刺さるものがあり、人を助けるために成功させ続けなければならないと思い続けているだけです」とおっしゃり、生徒たちの心も大きく動いていました。

その後、大学のカフェテリアへ移動し、現地学生も利用している空間で私たちも夕食をとりました。

ホテル帰着後は、アメリカで最後の振り返りの会をしました。理系の議論もあれば、キャリアの考え方の話もあったり、アメリカと日本の社会保障の違いに関する議論も出てきて、ざっくばらんに生徒と教員が話し合う有意義な時間となりました。


※1班分撮影し損ねてしまいました。

あっという間に帰路へ向かう日がやってきました。
慣れない異国の食事や時差に、疲労も溜まっているなかですが、気をつけて帰ります!
次の更新は帰着報告となります。

高校2年CSコースの保護者の皆様におかれましては、利用する空港や航空会社のホームページ上にて、航空状況をご確認いただきますようお願いいたします。航空状況以外に緊急連絡が必要な場合は、学校と連携し、しかるべき方法でご連絡いたします。