中学3年MSツアー

〜3日目(8月10日)〜
中学3年CSコースのサイエンスツアーも3日目、最終日になりました。午前中は、国立天文台野辺山宇宙電波観測所での研修でした。元観測所長で国立天文台名誉教授の井上允先生に解説していただきながら、観測所内を見学させていただきました。宇宙から飛来するさまざまな電波を巨大なパラボラアンテナでキャッチし、それを画像処理する電波天文学について、実際観測に使われる電波望遠鏡を目の前に、見学者用に設置されたパネルなども見ながら、とても丁寧に解説していただきました。電波望遠鏡のしくみや、電波を発するさまざまな天体、光を出さないために可視光(目)では見ることのできないブラックホールや暗黒物質についても、電波望遠鏡であれば、画像として確認できます。可視光のみをとらえる光学望遠鏡よりも、より本来の姿に近いとされています。野辺山高原という大自然のなかで、宇宙の神秘に迫るこの場所は、生徒たちの興味をかき立てるのに適切な場所でした。その後、井上先生に引き続き電波天文学について講義していただきました。内容は主に宇宙生物学(アストロバイオロジー)で、宇宙から飛来した原子や分子が、我々生命体をはじめ地球上の多くの物質を構成することになったこと、地球外生命体についても、さまざまな理論と先生ご自身の見解も交えながら、お話しいただきました。宇宙には、地球以外に知的生命体はいるのかという疑問には、生徒たちの意見も聞きながら、その可能性についても言及していきました。また、たくさんの生徒からの質問にも丁寧にご回答いただき、2時間半の研修も、あっという間に終わりました。雲に隠れた富士山が少しだけ見えるサービスエリアで昼食後、帰路につきました。

〜2日目(8月9日)〜
 午前の研修は、扇沢駅から電気バスに乗り黒部ダムへ向かいました。バスが走るトンネル内は、とても寒く、破砕帯(はさいたい)の吹き出す水の勢いと冷たさを肌で感じることができました。昨年度から事前学習で、ダムの仕組みや特徴については調べてきましたので、ガイドさんの詳しい説明を納得しながら聞くことができ、また、黒部峡谷での本格的な電源開発は、アルミニウムを国内精錬するために必要な大量の電力を黒部川に求めたことに始まる、という話も教えていただきました。ダムのアーチ部分を歩くと、正面に立山連峰、背後に後立山連峰がそびえ立ち、隆起の違いと地質の違い、また植生の違いまで自分達の目で見て確認することもでき、サイエンス的な側面で、ダムを考察できたように思います。実際に現地に立つことにより、黒部川第四発電所を作ったたくさんの方々の努力と熱意も感じてくれたとも思います。

 午後は、岐阜県飛騨市神岡町にある、ひだ宇宙科学館カミオカラボでの研修です。ここは、ノーベル賞受賞者を二人も輩出した世界的な研究施設スーパーカミオカンデをテーマにした施設で、実際には入ることのできないスーパーカミオカンデを、レプリカなどを用いて説明していただきました。なぜ神岡鉱山にスーパーカミオカンデを作ったのか、ニュートリノとは一体何なのか、そのニュートリノをつかまえることにどのような意義があり、どのくらい大変なのかなどを、体験も織り混ぜて詳しく説明していただ、生徒たちの理解が一気に進んだのでないかと感じました。

 夜の報告会では、前日の反省点も踏まえて、各個人の発表方法の改善に加えて、それらを集約しながら協力して発表してくれました。発表する内容が別であっても、同じ説明をクラス全員がガイドさんから教えていただきましたので、発表の内容とは違った理解をした生徒から質問か出ると、それに対し口々に「それはこういう意味だったのでは?」と活発な議論が始まり、発表者もそれを聞いてさらに理解を深める場面もありました。また、新たな疑問点も湧いてきて、事後レポートのための新たなテーマを見つけることもできたようです。

 2日目の報告会は、前日より濃い内容となり、生徒たちは充実感いっぱいの顔を見せてくれました。

〜1日目(8月8日)〜
 中学3年生のMSツアーが、8月8日から2泊3日の行程で始まりました。2年間、コロナの流行により実施できませんでしたので、中学3年生にとっては初めてのMSツアーです。
 初日は、大阪駅に集合し、バスで長野県にある市立大町山岳博物館へ向かいました。当初、新潟県のフォッサマグナミュージアムと長者ヶ原考古館へ行く予定にしていたのですが、先日の大雨で特急サンダーバードが運休となってしまったため急遽決まった研修先です。
 この大町山岳博物館は、山の中腹にある、日本初の山岳をテーマとする博物館です。渋滞で到着が遅れ、短い見学時間となりましたが、夜の宿舎での報告会の発表のため、各自熱心にパネルの説明を読んだり、ニホンカモシカなど、この地域特有の生きもの生態について知ることができたようです。
 報告会では、5班に分かれ、一人ひとりがテーマを決め、全員が発表を行いました。発表内容は多岐にわたり、北アルプスの山々と人との関わり方が縄文時代から現代までどのように変わってきたか、大町登山案内人組合を設立した百瀬慎太郎について、特別天然記念物である雷鳥や、この博物館の象徴ともいうべきニホンカモシカのこと、また、大町市で再び定着してきたイノシシの最近の生態について、などなど。活発に質問をする生徒も多く、初めてとは思えないほどの実りある報告会となりました。
 2日目の報告会も楽しみです。