平成29年度スーパーサイエンスハイスクール
研究開発実施報告書(要約)

① 研究開発課題

探究力、創造力にあふれ、国際性に富む女性研究者・技術者を育成する中高一貫教育モデルの開発・研究

② 研究開発の概要

研究開発目標を以下の3点に掲げ、取り組んできている。

研究開発目標

① 女性研究者・技術者の育成を目指す中高6年一貫教育モデルを完成させ、高大連接に繋げること。
② SSH活動の成果を地域に広げるセンター機能を確立すること。
③ 教科との連携によって対話的授業を広げ、科学的探究心やコミュニケーション能力を図ること。

上記3点の実施に当たり、以下の仮説を設定し、実践、評価を行った。

仮説①:

『中学校で自然と触れあう「ものづくりと研究」を、高校で「体系的な探究指導」を行って、探究心とコミュニケーション能力を磨けば、質の高い研究・開発を行う女性人材を育成することができる。』

仮説②:

『対話的授業によって、言語力、コミュニケーション能力を鍛えることができる。』

③ 平成29年度実施規模

SSコース1年43名、同コース2年50名、同コース3年46名、合計139名を主対象に実施した。さらに、課題によって、Iコース理系2年 59名、同3年 89名をも含めて実施、高等学校全生徒287名を対象に実施した。

上記の「研究開発の概要」で述べているように、本校は「理系女子の中高一貫敎育」を行っている。

中学SS、CSコース生徒、合計120名を対象に実施、中学校・高等学校全校生徒、合計407名を対象に実施した。それについては、後に記す。
(本校は、スーパーサイエンス(SS)コース、スーパーイングリッシュ(SE)コース、インテリジェンス(I)コースの3コース制を採ってきたが、今年度(平成29年度)中学1年からは、それを変更して創造グローバル(CG)コース、創造サイエンス(CS)コースの2コース制としている)

 

④ 研究開発内容

○研究計画

(1)平成29年度(経過措置1年次)
① これまでの研究開発成果の発展的継続。
② 課題改善のための校内組織およびカリキュラムの再編。
③ 新規探究および過去研究開発成果の整理と発掘。
(2)平成30年度(経過措置2年次)
① これまでの研究開発成果の発展的継続。
② 課題改善のための校内組織およびカリキュラムの再編継続。
③ 新規探究および過去研究開発成果の整理と発掘の継続。
 

理 科

 

科学演習実験Ⅰ 高1
科学演習実験Ⅱ 高2
科学演習実験Ⅲ 高3

○教育課程上の特例等特記すべき事項
・特例はない。
・「学校設定教科・科目」を次の表に示す。

教 科   科 目 履修学年 単位
 

学校設定
教科

 

科学セミナー 高3
理系英語Ⅰ 高1
理系英語Ⅱ 高2
理系英語Ⅲ 高3

 

○平成29年度の教育課程の内容

上記の通りである。

  • 高校1年で行う「科学演習実験Ⅰ」では、校外研修および海外研修も含めた。
  • 高校2年「科学演習実験Ⅱ」では、本学院の大学での連携授業を実施した。
  • 高校3年「科学演習実験Ⅲ」では、大学での連携授業に加え、臨地研修も実施した。
  • 中学では、理科、数学の時間数を増やし、「総合的な学習の時間」を利用した「ものづくり」や夏休みに臨地研修として行う「サイエンスツアー」、成果発表会など、SS(CS)コース独自の行事を実施した。

 

◯具体的な硏究事項・活動内容
以下の8項目について行ってきた。すべて継続実施であり重複を避けるため、ここでの詳述は控えるが、今年度から新たに実践した内容を含む③、⑤、⑧に特化して述べる。

硏究事項・活動内容
①「ものづくりと硏究」、「課題研究」
② 学校設定教科・科目の実践硏究
③ 授業硏究1
④ 講演会・特別授業
⑤ 校外研修・サイエンスツアー2・海外研修
⑥ 国際化教育の推進と実践硏究
⑦ 地域交流センター構想の実践硏究
⑧ 大学3・研究機関・企業などとの連携

※1:③ 授業硏究

今年度から全教職員がiPadを使用して授業を行うことができる環境整備を整えた。また、新たにコース再編された中学1年生全員がiPadを購入し、全教科でその活用を開始した。

 

(仮説)
「生徒と教員が、個人でiPadを使用することで、より細やかな教科指導、心の教育、際限のない教育効果が見込まれる」

(実践)
・研修部を中心に全教職員で研修会を行った。
・外部講師を招いて全教職員で研修会を行った。
・校内での実践報告会を開き共有し合った。

(評価)
*教材提示が活動的・迅速的になり、いわゆるアクティブラーニングが行いやすくなった。
*表面的な活動のみならず、これまで見えにくかった生徒状況把握にも役立つ。
*平成30年度は、高校3年生を除く全学年生徒がiPadを購入予定である為、可能性が広がる。

※2:⑤ サイエンスツアーこれまで「本物・先端技術・女性研究者に触れる」ことを意識して、8月に行ってきた。最終年の高校2年生では、進路選択を含むキャリア教育を含めてきた。今年度、高校2年生に、新たに「盲聾」の視点を導入し、物事の本質を見極め、課題発見能力を養うことを目的とした実践を行った。

 

(仮説)
「見えない・聞こえないこと」を前提とし、その状況で考え、五感で感じとろうとすることで、物事の本質を見極め、課題発見能力および社会貢献に向けての素養を養うことができる」

(実践)
・高校2年生全員が、東京大学先端科学技術センターの指導を受けた。
・事前事後学習を経て、さらに興味関心を持った生徒を募集・選考し、継続指導を受ける。

(評価)
*私たちを取り巻く環境は、表面的・直接的な思考や評価されやすく短絡的な思考に注意を奪われがちな為に、物事の本質をじっくり考え、肌で空気を感じ取る感覚や人として大切な心が薄れていると感じている。一定の成果を得たと感じている。継続指導は2名となる。

※3:⑧ 大学との連携

これまで継続指導としての大学との連携は、化学・生物分野が中心で、物理・数学分野は、建築関係の研究グループに限られていた。今年度、高校1年生に、新たに「関西大学システム理工学部」との継続的指導の連携を開始した。

 

(仮説)
「希望者を対象に、基礎的な実践的学習から始め、興味に応じて次第に高度な学習へと発展させて行けば、高校のレベルを超えた知識・技能・探究力を身に付け、研究者への道に繋がる」

(実践)
・高校1年生全員に呼び掛け、希望者を募り、基礎的な実践的学習を計5回(2~3時間/回)実施した。
・今年度の成果発表会を行い、互いに確認し合うことにより、次の段階を意識した。

(評価)
*組紐にセンサーを組み込む研究の基礎となるプログラミングの学習に、高校1年生の約半数が希望し、その希望者全員が最後まで積極的に取り組んだ。
*実習中心の入門から始まり、グループ毎に独自のアイディアを出し合い、発表会で共有した。
*以上のことは、今後への可能性を感じさせるものとなった。

⑤ 研究開発の成果と課題

○実施による成果と評価

①「ものづくりと硏究」、「課題研究」
成果:中学入学直後からの体験的学習が体系化されており、高校3年全員が英語で研究発表できる。
評価:12月の本校成果発表会で中高生徒全員が発表し、運営指導委員他の方から評価を得た。

② 学校設定教科・科目の実践硏究
成果:課題・卒業研究および発表を通して、その手法および対話から学ぶ体験を全員が経験した。
評価:本校生徒は控え目な生徒が多いが、体験によって明確な変化として校内外でその評価を得た。

③ 授業硏究1
成果:今年度は、全教室、全教職員、中学1年生まで環境整備が進み、充実の為の研修を実施した。
評価:校務の情報化が進み、教材研究、可能性が広がり、生徒との対話の機会も増えつつある。

④ 講演会・特別授業
成果:外国人研究者による英語での講演会、公開講演会が生徒の進行という形で実施されている。
評価:生徒たちのリスニング力は、PowerPointのスライドを見ながらおおよそ理解できている。

⑤ 校外研修・サイエンスツアー2・海外研修
成果:中学・高校での「本物・先端技術・女性研究者に触れる」研修が、一定の成果を得ている。
評価:生徒たちが、その目的・意義を理解し、事前事後指導も合わせて内容を消化吸収している。

⑥ 国際化教育の推進と実践硏究
成果:高校1年での海外研修、「理系英語Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」、英語での講演会、英語での卒研発表等を実施。
評価:上級生の発表会、校外での英語での発表会等の経験から、実施が当然という意識構築が完成。

⑦ 地域交流センター構想の実践硏究
成果:「科学交流合宿研修会」、「親子で楽しむ科学教室」、「食育研究」等を毎年実施している。
評価:SSH校以外の高等学校、兵庫・大阪の近隣小学校、地域の市民の方々に馴染んでいる。

⑧ 大学3・研究機関・企業などとの連携
成果:本学、大阪大学、関西大学、神戸大学、理研、SPring8、JT生命誌研究館、武田薬品工業等で実施。
評価:課題研究・各研修会・校外研修等の各指導形態がほぼ完成。継続発展・新機軸を開始した。

 

◯実施上の課題と今後の取組

①「ものづくりと硏究」、「課題研究」
課題:化学・生物分野が多く、物理・数学が少ない。内容の深化。発表を通しての諸能力習得。
取組:関西大学システム理工学部との連携プログラムの発展、数学分野の研修見直し。

② 学校設定教科・科目の実践硏究
課題:「科学演習実験Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」、「数学演習Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」の内容・進度等の調整。大学との連絡調整。
取組:「化学基礎」「化学」等の教科担当者との連携、大学各学部との日常的な連携強化、見直し。

③ 授業硏究1
 課題:iPadの導入により、授業が活動的・迅速的になった。個々の生徒への対応手段・方法が課題。
取組:全教職員で、校内研修会・報告会・外部講師を招いての研修会等を教科を超えて実施した。

④ 講演会・特別授業
課題:質疑応答能力。日本語・英語に関わらず、質疑応答によって考えを論理的に深化させること。
取組:京都大学iPS細胞研究所(CiRA)から外国人若手女性研究者を招き、英語による講演を実施等。

⑤ 校外研修・サイエンスツアー2・海外研修
課題:高校1年での海外研修後の発展。2015年3月に実施した「英国サイエンス研修」の見直し。
取組:校外研修、サイエンスツアー、海外研修は毎年見直しながら実施。上記課題の調査を実施。

⑥ 国際化教育の推進と実践硏究
課題:理系英語、英語による講演会、高1海外研修等に続く、発展学習の場を望む生徒の場の確保。
取組:段階を経て2014年度から全員英語での卒研発表を実施。「英国サイエンス研修」等の調査。

⑦ 地域交流センター構想の実践硏究
課題:1.「科学交流合宿研修会」は、事前準備と費用確保。2.「食育研究」は、他コース生徒への拡大化。
取組:1. 学院の施設「丹嶺学苑研修センター」を使用して実施。2. 今年度は、Iコース生徒が実施。

⑧ 大学3・研究機関・企業などとの連携
課題:日常的連携と物理・数学分野の探究開拓。表面的・直接的・短絡的で評価を意識した思考。
取組:研究対象、実験・評価方法等が確立していない探究活動。現在、試行錯誤実施中。