令和元年度 スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告書(要約)
① 研究開発課題
「未来世代への提言」を目指し、女性の科学技術人材を育成するプログラムの開発
② 研究開発の概要
一貫性・系統性のある「探究活動」を文理の枠を超えて取り組むことで、高次の資質・能力を育成する。この目標を達成するために、次の３つのプログラムを設定する。(1)すべての生徒が持続可能な開発目標(SDGs)に沿った「探究活動」に取り組むことで、幅広い知識と教養に裏付けられた「知」の高度化による科学的素養を育成する。(2) 「EdTech」などを活用して、「探究活動」を核とした教科横断型カリキュラムを開発する。 (3)大学等との連携により、国際性を兼ね備えたグローバル科学技術人材を育成する。これらに加えて、各教科および「探究活動」のルーブリックを作成・研究開発し、「Mukogawa Science」として構築する。その成果を国内外に発信し、未来世代への提言を行う。
③ 令和元年度実施規模
今年度、中学校、高等学校の創造サイエンスコース（以下CSコース）６学年(各学年1クラス合計６クラス)を中心として、今年度から創造グローバルコース（以下CGコース）にも年次進行で拡大して実施する。
④ 研究開発内容
○研究計画（2019年度～2023年度）
| 中学生 | 高校１年生 | 高校２年生 | 高校３年生 | ||||
| 第 １ 年 次 |
中学１･２年「自然環境と科学」をテーマとする組織 | SDGsの学習、探究活動の基礎･課題設定の方法、スーパーアドバイザーの招聘 | 学校設定教科・科目と関連させ、グループ研究（経過措置） | 「卒業研究」 （経過措置） |
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| 第 ２ 年 次 |
中学３年「課題研究」の組織体制 | SDGsの学習、探究活動の基礎･課題設定の方法、スーパーアドバイザーの招聘 | SDGsにかかるテーマごとに探究活動を進める。 | 「卒業研究」 （経過措置） |
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| 第３年次 | 中学１･２年｢自然環境と科学｣、中学３年｢課題研究｣組織体制の確立 | 高校１･２･３年生 | |||||
スーパーアドバイサーの招聘 |
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| 第 ４ 年 次 |
中学としての課題研究の検証 | 第３年次に準じる。 | |||||
| 第 ５ 年 次 |
中学としての課題研究の評価 | 最終年次として、SSH事業の総括並びに未来世代への提言と発信、ルーブリック評価完成 | |||||
○教育課程上の特例等特記すべき事項
・必要となる教育課程の特例とその適用範囲
高校必修教科である「情報の科学」をプログラミングに特化した授業として展開し、C言語、Java、Physonなどの言語によるプログラミングの授業を行う。
| コース | 開設科目名 | 学年 | 単位数 | 代替科目等 | 単位数 | 対象 |
| CSコース | プログラミング基礎 | １ | １ | 情報の科学 | １ | CS全員 |
| CSコース | プログラミング応用 | ２ | １ | 情報の科学 | １ | CS全員 |
○令和元年度の教育課程の内容
特例は必要としないが、特例に該当しない教育課程の変更を要する。
| 教科等 | 学年 | 単位 | 実 施 内 容 |
| 科学探究Ⅰ | 高１ | １ | 「研究入門」、課題設定の支援、実験基礎の実習 |
| 科学探究Ⅱ | 高２ | １ | グループ研究支援の実験･実習 高大連携授業(系統化を図る) |
| 科学演習実験Ⅲ | 高３ | ２ | |
| 科学セミナー | 高３ | ２ | 卒業研究を行い、各自卒論をまとめる |
| 理系英語基礎 | 高１ | １ | 科学英語の基礎 |
| 理系英語Ⅰ | 高２ | １ | 英語による論文作成と口頭発表の指導 |
| 理系英語Ⅲ | 高３ | １ | |
| MSタイム（総合的な探究の時間） | 高１ | １ | 探究活動の手法、課題設定、課題研究 |
| 高２ | １ | 探究活動（課題研究・発表） | |
| 高３ | １ | 探究活動（課題研究・発表・論文提出） |
○具体的な研究事項・活動内容
１ 幅広い知識と教養に裏付けられた「知」の高度化による科学的素養の育成
1.1 読書活動の推進
1.2 SDGsに沿った一貫性・系統性のある「探究活動」による「探究力」の育成
1.3 キャリア形成としての卒業生による講演などによるロールモデルの活用
1.4 「MSomosiroツアー」（MSツアー）の実施（中１･中２・中３・高１・高２）
２ 「探究活動」を核とする教科横断型カリキュラムの開発
2.1 「探究力」の基礎と位置づける｢思考力｣｢読解力｣｢対話力｣を重視した教材開発
2.2「探究活動」との関連で構成する学校設定科目等における教材開発
2.3 EdTechを活用した教材開発
３ 大学等との連携による国際性を兼ね備えたグローバル科学技術人材の育成
3.1 国際性を涵養し、国際的に活躍できる人材の育成
3.2 他の高校、大学、企業との連携による高度な探究活動
3.3 海外研修と海外交流
４ 各教科及び探究活動におけるルーブリックの作成と検証評価
各教科及び探究活動におけるルーブリックの作成
５ SSH活動の成果を地域に還元する実践研究
(1) 科学交流合宿研修会 (2)親子で楽しむ科学教室（3）兵庫「咲いテク」事業の参加
⑤ 研究開発の成果と課題
○研究成果の普及について
①「サイエンスフェア in兵庫」への参加など外部の発表会・コンテストへの参加
② 地域の高校生や地域社会に公開するSSH公開講演会の開催
③ SSH公開研究会の実施
④「第12回科学交流合宿研修会」の実施
⑤ 小学生の親子を対象とした「親子で楽しむ科学教室」の実施
⑥ 武庫川女子大学国際健康開発研究所の指導による食育研究成果の発信
⑦ 本校のSSH事業成果を発表するSSH成果発表会の実施、HP掲載、月1回MS通信発行
○実施による成果とその評価
［プログラム１］幅広い知識と教養に裏付けられた｢知｣の高度化による科学的素養の育成
中学校では全校読書会、高校ではビブリオバトルを実施し、読書活動を積極的に推進しているが、学校全体としての取組には課題が残る。また、SDGsに沿った一貫性・系統性のある「探究活動」による「探究力」の育成については、第３期の指定を受けて、改めてSDGsの基礎知識の学習や、本校で考えた６分野について専門家の指導を受け、SDGsに関する内容の理解を深めることができたが、課題としては、CSコースが取り組んでいた探究活動との融合をどのように図るかが課題となる。さらに、「MSツアー」の実施についても、これまで実施しているCSコースだけのサイエンスツアーをどのように拡大していくかが課題である。
［プログラム２］「探究活動」を核とする教科横断型カリキュラムの開発
「探究力」の基礎と位置づける「思考力」「読解力」「対話力」を重視した教材開発をするために、ICTを活用した授業研究や学校設定科目等での教材開発に取り組んだが、教科横断型カリキュラムの開発までには至っていない。現在「EdTech」を活用した新たな教材開発を試みている。
［プログラム３］ 大学はじめ関係機関等との連携による国際性を兼ね備えたグローバル科学技術人材の育成
国際性の涵養を目指し、英語力の強化を図るために、オンライン英会話や多読アプリ「Read to me」を試験的に導入することで、生徒の英語力は向上している。また、高大連携として、武庫川女子大学をはじめ、関西大学、大阪工業大学と連携して研究指導を受けることができたのは、研究活動に大いにプラスとなった。さらに、海外研修では、現地の大学・研究所・企業訪問や現地研究者・高校生との交流で、大きな影響を受ける機会となった。また、海外交流でも、「Bahcesehir High School for Science and Technoogy」との交流は、生徒にとって大きな刺激となった。
［プログラム４］各教科及び探究活動におけるルーブリックの作成と検証評価
各教科で重点的に育成する力などのルーブリックを作成するきっかけができた。
〇実施上の課題と今後の取組
［プログラム１］については、一つは、全校読書会を実施するにあたり、教職員の理解が必要であること、またSDGsに沿った探究活動を進めるにあたり、専門家だけに任せるのではなく、教職員も興味ある分野について担当していくことを今後検討する必要がある。
［プログラム２］については、各教科で重点的に育成する力についてのルーブリックを作成することができたが、「探究活動」を核とする教科横断型カリキュラムの開発にはまだ至っていない。今後は、ICTを使った授業を構成することで、教科横断型カリキュラムを作成する。また、Classiなどを活用した教材作りをさらに進めていく。
［プログラム３］については、英語力の強化を目指し、一定の結果を出すことができた。さらに、海外交流の継続化に向けて検討していく必要がある。また、ロボット作りを今後どのように探究活動につなげていくかが課題となる。
［プログラム４］については、各教科におけるルーブリックを一応作成することができた。しかし、その内容を十分検証するまでに至っていない。今後は、｢分かりやすさ、使いやすさ、評価しやすさ」の観点から改善する。