武庫川女子大学付属高校(兵庫県西宮市)の2年生が、「総合的な探究の時間」に取り組んだ研究の成果を発表する会が11月25日に行われました。4月以降、生徒たちは班ごとに、LGBTQIA+など性に関する問題や食糧、環境、街づくりなどさまざまなテーマの社会課題を取り上げ、解決策を探ってきました。この日は代表に選ばれた九つの班の生徒がスライドを使って披露しました。

班分けから8カ月かけ発表会

同校の探究活動は「MS(武庫川サイエンス)タイム」と名付けられ、2年生7クラス(約250人)のうち、創造グローバルコースの6クラスが取り組んでいる。MSタイムは隔週土曜の3、4限と年数回のフィールドワークを組み合わせ、独自の活動を実践している。今年度はテーマ研究と同時に、新聞の読み方やインタビューの仕方、記事の書き方を学び、年度末には新聞(通常の新聞判型と同サイズ)作りをする。

4月に班分け(全体で52班)をして、SDGs(持続可能な開発目標)に沿って研究する「食糧」「街づくり」「環境」「ライフサイエンス」「先端科学」の5分野と、データ分析や統計学を使って研究する「データサイエンス(DS)」の計6分野に分かれた。

各班は6月にテーマを決定して発表資料(ポスター)の作成に入り、中間発表を経て、10月末にポスターを完成させた。11月11日にすべての班による発表会を開き、「発表内容」「発表の様子」「ポスターの出来」を生徒が相互評価し代表を選考。代表に決まった9班(うち2班は英語発表)が25日の発表会に臨んだ。

英語でも10分間のプレゼン

発表会は階段教室で行い、会場に入りきらないクラスはオンラインでつないだ。9班がそれぞれのテーマ(表参照)について、10分間程度のプレゼンテーションした。

231218 各班の発表テーマ(jpeg)

“We were interested in why same-sex marriage is not recognized in Japan.”

英検準1級以上をめざすクラスに所属し、研究発表も英語で行う班がトップバッターを務めた。4人がすべて英語で報告した。

まず、中高年や政府が同性婚に否定的で、若い世代は受け入れているという仮説を設定。その仮説を確認するために、インターネットを使い、世代ごとのLGBTQIA+や同性婚への理解度を調べた。さらに、アイルランドなど海外の例にも当たった。最後に、“What we can do?”として、LGBT関係の団体との交流や同性婚をテーマにしたドラマなどを見ることで、理解を深めることを提案した。

アレルギー緩和の方策は

食の問題もまた、生徒たちの関心が高い領域だ。第8班が選んだテーマは「アレルギー反応の緩和」。テーマの案を出し合う中で、メンバーの一人の家族がエビアレルギーだという話が出た。「身近なテーマだし、自分もアレルギーについて知りたいと思った」(飯島蘭さん)といった意見が出て、このテーマに決まった。

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「アレルギー反応の緩和」について発表する8班の生徒

調査では「食物アレルギーとは」を調べるとともに、インスタグラムを使ってアンケートも実施した。回答した150人中、21人はアレルギーが「ある」と答えた。「ある」と答えた人には、どんな症状があるかも聞き取った。さらに、アレルギーは遺伝と環境により起こるが、遺伝するのは「素因」であり、発症するかどうかは環境によるという考察をまとめた。

身近な人の同性婚には迷いも

「データサイエンス(DS)」分野でも、第4班が「世界的に見た同性婚・パートナーシップ制度について」と題し、同性婚を取り上げた。調査のメインはGoogleフォームを使ったアンケートで、質問項目は①同性婚をどう思うか②パートナーシップ制度を知っているか③同制度への賛否④家族や友人などの身近な人に同性と結婚したいと言われたら受け入れるか――の四つ。④を設定したのは、「身近で起きたらどう思うか、自分の事として考えてもらうため」(占部杏奈さん)ためだ。

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データサイエンスの視点から同性婚などの問題を取り上げた4班の生徒

高1、高2の約280人と約30人の先生から回答を得た。その結果、同性婚への賛成は極めて高かった一方、パートナーシップ制度の認知度はまだ高くなかった。また、④の「身近な人の同性婚」については、生徒の22%、先生の39%が「分からない」と答え、判断に迷っていた。研究結果について、班では「学校などで知る機会を増やしていけば、偏見をなくしていけるのではないか」(上岡咲弥さん)と受け止めている。

バリアフリー化、私たちが声をあげる

最後の9班は「街づくり」分野を選択した。「障害者のためのバリアフリー」をテーマに各地の観光地の状況を調べ、清水寺など有名な観光地ではかなりバリアフリーが進んでいることが分かった、と報告した。一方、身近な西宮市でどの程度バリアフリーが進んでいるか、夏休みに商店街や寺社を実地検証した結果、まだ十分ではないと分かったという。

問題解決のために自分たちに何ができるか。「がたがたの道路を直したり、改修の計画を立てたりすることはできないが、これからを生きる私たちが意見や声を上げ、バリアフリーの大切さを伝えていくことが大切と思った」と総括した。

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7班の生徒は体外受精の影響について調べた

最後に2年生の学年主任の大﨑剛史先生が「こういう発表をする、共有する、感動し合うといったことはAI(人口知能)にはできない。探究活動で身に着けたことを将来の進学や職業を考える際に生かしていってほしい」と講評した。